ビジネス

2022.08.06

空き家問題と地域の活性化、SEKAI HOTELがめざす体験型の宿泊施設

世代、国籍、地域住民、観光客、すべての人が分け隔てなく楽しむ「お祭りの夜」を表現したSEKAI HOTELのビジョンアート


2018年には東大阪市布施の「商店街」で2号店をオープン。SEKAI HOTELを運営していくなかで、住宅地よりも商店街のほうが、街の魅力が宿泊者にも届きやすく、地元の人たちからも受けいれられる。なにより他の地域でも課題解決にも繋がるモデルになると考えたことから、商店街を選んだという。


宿泊者向けのパスポート「SEKAI PASS」を持参すると、商店街でさまざまな特典が受けられたり、店舗の人たちから歓迎の声をかけられたりする

先日、私もSEKAI HOTELに宿泊してみた。近鉄大阪線・奈良線の布施駅を降りて、商店街を歩くこと約5分、一見カフェのようなフロントがある。そこに客室はなく、チェックインを済ましてSEKAI HOTELのパスポート「SEKAI PASS」を受け取ると、案内をしてもらいながら街を歩く。商店街を2、3分ほど進むと、宿泊する建物までたどり着いた。

宿泊客はSEKAI PASSを携帯することで、近くの銭湯が無料で楽しめたり、純喫茶で朝食を食べられたりする。夕食も提携している商店街内の飲食店が10店舗以上あり、オリジナルメニューや割引特典も受けられるシステムだ。

パスポートを首から下げて商店街を歩いていると、それだけで宿泊客だとわかるためか、街の人から声がかかる。商店街の人たちとの会話が弾むように工夫されているのだ。実際に私もお惣菜屋さんや七味唐辛子屋さんから温かい声をかけられたりした。宿泊者にとっては、それらも体験コンテンツとして楽しめるわけだ。


どこにでもある商店街が、宿泊者の非日常となり体験コンテンツとなる

社会課題解決の鍵となる「まちごとホテル」構想


SEKAI HOTEL のような「まちごとホテル」を成立させるポイントとして、前出の矢野は「現場に任せる組織づくり」と「商店街とスタッフの接点の量」であると語る。矢野はオープンの前に商店街でホテルを経営することの価値と魅力についてスタッフと徹底的に議論を重ねたという。

現場に任せる組織づくりとしては、契約や捺印などを極力なくし、商店街とのコミュニケーションを大切にし、新しい企画は現場の自発性を尊重しているという。実はSEKAI PASSも学生インターンが企画したアイデアである。
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文=内田有映、取材協力・写真提供=SEKAI HOTEL Inc.(矢野浩一、久米佑宜)

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