今回、テールゲートも面白い工夫をしている。2分割のテールゲートの下の部分を開けたらテールシートが生まれる。しかももう一枚の隠れた板のようなシートバックを立たせると、非常に楽な腰掛け用のシートが作れる。また、そのシートをより楽しむために、なんとカップ置きというか、シャンパーニュのグラスを置くスペースが2人分ある。さらにオプションとして、センターコンソールの中に冷蔵庫が入っているし、後部席にもシャンパンが入る冷蔵室があるので、そういう点はベントレーとロールスに負けていない。
エンジンのラインアップはかなり充実している。4.4リッターV8ガソリン・ツインターボ、3.0リッター直6ガソリン・ターボ、3.0リッター直6ディーゼル・ターボの3種で、日本仕様は直6ディーゼルがマイルド・ハイブリッド、そして直6ガソリンはプラグイン・ハイブリッドと組み合わされる。
僕が試したのは、新しく開発された525hpを発揮するV8ツインターボ。これはなかなか気持ちの良いパワーユニットだ。車重2,500kgの巨体を動かすのに、十二分の力を持ち、アクセルを半分踏んだだけでも、どのシチュエーションにも対応する加速感は得られる。しかも、さすが親会社のジャガーランドラーバーのエンジンによるサウンド・チューニングはまるで音楽的だと感じた。と言うのは、新レンジローバーの静粛性はクラス一なのに対して、アクセルをベタ踏むと、V8の素敵な歌だけを室内に入れるという上品な仕上がり。その静粛性は程度の良いマグロ大トロに喩えたら、そのV8のソングはまるで、美味しいマグロをいただくのに不可欠なフレッシュなワサビをかけたようなコンビ。そのワサビのようなスパイスは立派に効いている。
今回のレンジローバーの走りをさらに向上させているのは、新しく追加されたエアサスペンションと、後輪も動く4ホイール・ステアリング(4WS)だね。そのおかげで、新型は小回りが効く。話によると、メルセデスベンツAクラスの半径より小さく回れるそうだ。とにかく狭い路地か駐車場に入る時も、まるで中型車のように操作できるので、楽ちん。
エアサスによる優れたコンフォート性を持つ乗り心地は先代から引き継いでいるものの、ステアリングを操作すると、路面からしっかりとフィードバックがあるし、正確にクルマの動きに反映される点が先代とは異なる。このステアリングのおかげで、大きくて重いボディを持つレンジローバーも大きくは感じない。
外観のすっきりしたスタイリング、パワフルなV8エンジン、4WSによる滑らかなハンドリングの乗り心地、どの高級車メーカーにも負けないテクノロジーたっぷりの高級な室内、そして圧倒的な存在感が、新型レンジローバーを3年待ち状態にしているではないか。年内に1台欲しければ、ディーゼル仕様、またはSVRのスポーツ仕様を選ぶしかないだろう。
国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
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