1970年に初代が誕生した時から、レンジローバーは貴族や有名人にずっと好まれてきている。同車はやはり特別な存在。男なら生涯に一度ぐらい乗りたいと憧れるレンジローバーは、サハラ砂漠を横断することもできるタフさを持ち、プリンセスを舞踏会へ送迎もできる。性能とルックスから考えると、そんな2役を演じられるSUVはレンジローバーだけ。
2013年に4代目が出てから9年が経つけど、考えてみると、1970年に初代が登場してから52年間のうち、5代しか出ていない。それを知ると新型がどれだけ重要かがわかる。
さて、デザインを見てみよう。先代と比べると、新型の外観はよりスムーズでシンプルになったと言える。SUV好きなら息を呑むほど美しく映るだろう。ボディ構造は先代のアルミ・モノコックから軽合金やスチールを適材適所に用いた新世代のモノコックに進化した。先代同様、ホイールベースはスタンダード(SWB)とロング(LWB)の2種類がオファーされているが、特徴的なのはロングに初めて3列シートが採用された点。もちろん、3列のシートはレッグルームが小さ目なので、実際は子供しか乗せられないだろう。
なんか、新型はまるで先代の外観を少し溶かしたかのような仕上げによって、よりエレガントな雰囲気を出したとさえ言える。ジェリー・マクガヴァン率いるデザインチームが練り上げたコンセプトとは、「どれだけ格好いいのか」。Aピラーから徐々に下降するルーフライン、水平に力強く伸びたショルダーライン、そして短いフロントのオーバーハングを含むプロポーションは、新型のミニマリズムの美しさを象徴している。ミニマリズムとは1960年代、おもにアメリカで展開したアートムーブメント。 シンプルな形と色を使い、装飾や説明要素をできるだけ削ぎ落とした表現が特徴。マクガヴァンを含めた多くの自動車デザイナーが好むデザイン・フィロソフィーになっているからこそ、こんなに美しい高級SUVができる。さらにボディパネルのつなぎ目を極限まで減らし、余計なデザイン要素をすべて取り払っているので、すっきり感がある。
内装も全部一新しているし、新しいテクノロジーをふんだんに採用している。ダッシュボードやセンターコンソールの造形は直線的でシンプルであるが、ディテールにこだわり抜くことで、限りなくモダンで美しいインテリアを作り上げている。まるで高級ヨットのラウンジみたいな雰囲気。高級レザーや木製パネル、そしてアルミのアクセントもふんだんに採用している。そこに使われている素材の質感や発色も、目が点になるほど魅力的だ。ダッシュボードの真ん中に配置する13.1インチの大型タッチスクリーンは、まるで浮かんでいるような「フローティング・タイプ」になっているので、格好よく、使いやすい。
実は、内装を眺めた第一印象は、ベントレー・ベンテイガやロールスロイス・カリナンという超高級SUVを意識していると感じた。やはり、この2台は、先代のレンジローバーがデビューした後に登場しているわけなので、レンジローバーはそれらと競争できるように、エンジンのパワーと室内のクオリティをさらに向上させていると思ったのは、僕だけではないだろう。