ビジネス

2022.07.30 12:00

ビジョナリーを失った企業の末路、不安はアップルやアマゾンにも

Casimiro PT / Shutterstock.com

先進的な小売企業だったはずの生活雑貨店「ベッド・バス・アンド・ビヨンド(BBBY)」は現在、業績不振に苦しむ負け組へと転落している。同社の長く悲しい物語は、成功を収めた企業が、ビジョナリーとビジョンを失った時に何が起きるかを教えてくれる、この上ない実例だ。

ピーク時の2018年に125億ドルを記録した同社の売上は、今では74億ドルにまで落ち込んだ(直近12カ月の売上高)。同社の時価総額も、大きくしぼんだ。2015年には80ドル近くだった株価も、今は5ドル前後で取引されている。大規模なリストラ、あるいは破産申請は、どうやら不可避のようだ。

BBBYは極端なケースだとはいえ、同様の不安は、アップルやアマゾンに関しても高まりつつある。この2社はともに、先見的なビジョンを持つ創業者が会社を去ったことで、両社を誰もが認める業界最大手に押し上げるのに貢献してきた、期待感やエネルギーが失われてしまっている。

BBBYの最新の動向としては、最高経営責任者(CEO)のマーク・トリットン(Mark Tritton)が、この6月に引責辞任している。2019年に小売大手のターゲットから招かれたトリットンに与えられた使命は、苦境にあるBBBYを救うことだった。マーケティングに関する実績を引っ提げてCEOに就任したトリットンだったが、奈落に転げ落ちる企業を救うのに必要なスキルやビジョンには欠けていたようだ。

BBBYでは、トリットンの前にCEOを務めていたスティーブン・テマレス(Steven Temares)も辞任に追い込まれている。テマレスは30年にわたってBBBYに在籍し、さまざまな役職に就いていたが、もともとは不動産分野を専門とする弁護士だった。

BBBYは、1985年に大規模な店舗展開に着手して以来、米国最大の小売企業に成長。いわゆる郊外型の大規模小売店の端緒となり、真のカテゴリーキラーとしてもてはやされた。そうしたかつての栄光を振り返ると、混迷を極める現状にはあぜんとさせられる。BBBYは、それまで専門店で構成されていた既存の家庭用品業界を破壊した。家庭用品や生活雑貨を販売していた、家族経営で地域密着型の店舗を駆逐したのだ。
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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