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2022.07.28

メタのVRアプリ買収は「独禁法違反」、米FTCが裁判所に提訴

Getty Images

米連邦取引委員会(FTC)は7月27日、メタ(旧Facebook)によるVR(拡張現実)アプリ制作会社「Within」の買収を阻止するために連邦裁判所に提訴を行った。FTCは以前から、テック大手の支配力の拡大に厳しい目を向けている。

FTCはカリフォルニア州の連邦裁判所に、フィットネスアプリ「Supernatural」で知られるWithinの買収完了を阻止する差し止め命令を求める訴状を提出した。メタバースにおける事業拡大を目指すメタとWithinは昨年10月、4億ドル(約546億円)の買収契約を結ぶと発表していた。

FTCは、メタがWithinの買収を認められれば、VRフィットネスアプリの市場を独占することになり、「イノベーションの低下や品質の低下、価格の上昇、消費者の選択の減少など、複数の有害な結果をもたらす」と主張している。

「メタとCEOのマーク・ザッカーバーグは、VRエコシステム全体をコントロールしようとしており、競合他社との競争を避けて、競合を買収している」とFTCは述べ、メタがWithinを買収すれば彼らにはライバルが居なくなり、「プロダクトを改良するインセンティブがなくなる」と主張している。

「これは、市場で競争する必要性をなくす行為であり、反トラスト法(独占禁止法)に違反する」とFTCは述べている。

メタは声明で、「FTCの訴えは証拠ではなく、イデオロギーと推測に基づいたものだ」とし、Withinの買収が「ユーザーや開発者、VR業界にとって良いものになると確信している」と述べている。

FTCの競争局副局長のジョン・ニューマンは27日の声明で、「メタはトップになるための方法を買おうとしている」と述べた。

メタが買収を試みたVR企業はWithinが初めてではないが、今回の買収は、同社にとってこの分野で最大の取引だとニュースサイトInformationは指摘している。

FTCのリナ・カーン委員長は、メタをはじめとするテック大手を激しく批判しており、メタがインスタグラムやワッツアップを買収するなど「反競争的行為と不公正な競争」を行ったとして、すでに連邦裁判所に反トラスト法違反で提訴している。

連邦判事は当初、FTCの訴えが「法的に不十分」で「具体的な事実の主張が薄い」と判断し、この訴えを棄却した。しかし、その後、FTCはより多くの証拠を添えて訴状を再提出し、裁判所はこの訴訟の前進を認めている。仮にFTCが勝利した場合、メタは解体され、ワッツアップとインスタグラムが分離されて別会社になる可能性がある。

メタは一貫して反競争的行為を否定し、これらの企業の買収が合法だと主張している。

編集=上田裕資

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