原作者の意図に近づいた内容!?
「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」で監督を務めるのは、前出④の「ジュラシック・ワールド」でもメガホンをとっていたコリン・トレボロウだ。彼は1976年生まれの45歳で、1946年生まれのスピルバーグより30歳も若い。それだけにこれまでのシリーズにはないチャレンジも試みている。
「スティーヴンと彼の協力者たちが始めた物語を、新しい世代が語り続けることを認めてくれたことに、とても感謝しています」と語るトレボロウ監督。この完結編をつくるにあたっては、テクノロジーと人間の関係や地球環境への視点など、独自の問題意識を織り込みながら作品を構築しているようにも思える。
前述のように、①②③の「ジュラシック・パーク」3部作と④⑤の「ジュラシック・ワールド」双方の登場人物を交差させることで、新たな密度の濃い人間ドラマを演出しているし、人類の未来を遺伝子工学で生まれた恐竜たちに託して描いているようにも思える。トレボロウ監督もこう語る。
「前作で、恐竜たちは島を出て広い世界に放たれた。その結末を描くことができるのは、本当に素晴らしい機会でした。この作品は、自然界の力を尊重することの必要性、もし人類がそれに失敗すれば、かつての恐竜と同じように絶滅してしまうということを描いています」
また多少うがった見方だが、バイオテクノロジーによって生まれた恐竜の存在を、いま世界が直面している新型コロナウイルスと置き換えて考えることもできるかもしれない。
そういう意味で言えば、1993年の「ジュラシック・パーク」から29年、「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」が描く世界は、単なる恐竜たちが登場するアクション活劇ではなく、現実世界へのメッセージも込められた意味深い物語ともなっているのだ。

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』7 月 29 日(金)全国超拡大ロードショー! (c) 2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved
前出の「ジュラシック・パーク」の原作者であるマイケル・クライトンは、1942年の生まれ。ベストセラー作家でもあったが、ハーバード・メディカルスクールで学んだ医学博士でもあった。代表作には「アンドロメダ病原体」(1969年)などがあり、医学や化学の知識を動員したテクノスリラーというジャンルを確立した作家だ。
彼は小説では主にテクノロジーを扱う人間たちの錯誤から生じる災害などを描き、最終的にはそれらの事態に警鐘を鳴らすというかたちもとっている。小説の「ジュラシック・パーク」でも、冒頭で折りしも勃興しつつあったバイオテクノロジーの現状に対する懸念を示している。
シリーズ完結編である今回の「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」は、かつてのクライトンの小説と合わせて楽しむことで、バイオテクノロジーや地球環境への問題も含めて、原作者の意図したものと同じようなメッセージをも感じとることができる。
マイケル・クライトンは、残念ながら2008年にこの世を去っているが、今回の「ジュラシック」シリーズの完結編を観たならば、少し自分の書いた小説に近づいたと満足したかもしれない。
連載 : シネマ未来鏡
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