その結果、インターネット上の情報の寡占化が指数関数的に進んだ。これによってGAFA4社のプラットフォーマーの企業価値の総額が、日本企業の企業価値の総額を上回ったのが2021年のことである。
「Web3」の動きというのは、この情報のプラットフォーマーによる寡占化に対抗するものであると言ってもいいだろう。
Web3を担う主要なテクノロジーはブロックチェーンとスマートコントラクトである。大雑把に言ってしまうと、ブロックチェーンが可能にするのが情報の分散化(中央で管理する主体が必要でなくなる)であり、スマートコントラクトが可能にするのが権限の分散化(中央で意思決定をする主体が必要でなくなる)である。
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例えばフェイスブックに投稿されたコンテンツは、フェイスブックが持つアルゴリズムが中央で権限を持っているので、そのコンテンツがどのように拡散するかはコンテンツのクリエイターであるユーザーがコントロールすることはできないし、それによって得られる広告収入も全てフェイスブックのものとなる。
だがブロックチェーンとスマートコントラクトを使えば、自分でつくったコンテンツがどのように流通し、それが利用されることによってどのように自分が利益を得ることができるのかを、自分で定義することが可能になる。
テクノロジーのビジネスにおいては、こうした集中から分散(バンドルからアンバンドル)、あるいは逆の動きというのは定期的に繰り返される、ある意味自然な動きだ。一方へ振られすぎた流れはどこかに歪みが生じ、時にはそれを破壊するような動きが起きたり、あるいはその歪みにつけ込んだ新しいビジネスモデルが生まれたりするというのがテクノロジーの世界だ。
Web3の動きは日本とアメリカでどう違うか
このWeb3の動きがどこに向かっていくかということを、日本とアメリカそれぞれの視点で比較しながら考えてみたい。
日本におけるWeb3の話題でよく聞くアングルが、「失われた30年」すなわち日本企業がインターネットにおいてGAFAに完敗してしまった遅れを取り返すチャンスだというものだ。
いまさらGAFAに対抗できるようなビジネスをWeb2.0の世界でつくることは不可能かもしれないが、Web3の新しいパラダイムは始まったばかりであり、いまここで日本が本気になればGAFAに対抗できるような企業やビジネスを生み出すことができるのではないかという希望だ。産業復興の目玉を探していた政府にとっても非常に都合のいいネタであることは間違いない。