未開の地を泥臭く切り開いた
──PMF(プロダクト・マーケット・フィット)後のスケール方法について聞かせてください。現在は私立園から公立の園まで、合計2000施設以上に「手ぶら登園」の導入が進んでいます。
最初の頃は保育所に電話営業をひたすら繰り返していたのですが、アポ獲得率は1%以下。「おむつの定額制サービス」という聞いたこともないプロダクトでしたので、話すら聞いてもらえない状態で、社内メンバーもかなり疲弊してしまいました。
ただ少ないとはいえ、話を聞いてくれた保育所を訪問してサービスについて説明をすると、みなさん口を揃えて「いいね!」と言っていただけたんです。保護者・保育士の負担が軽減できて、なおかつ園は無料で導入できるわけですから、否定する理由があまりありません。
なので外部のコールセンターを使ったりしてアポイントの質・量の向上を目指し、ちょうどその頃に「日本サブスクリプションビジネス大賞2020」でグランプリを獲得したことで認知も上げることができました。
特徴的だと思うのは、サービスの対象となる全国約40000の保育所に対して、すでに何周か電話アプローチをしているのですが、周を追うごとに徐々にアポ率が上がってきていることです。徐々にカテゴリとしての認知が上がってきたおかげで、商談の打席に立てることが増えてきました。
とはいえ、今ご利用いただいているのは約40000のうちの2000園なので、まだ5%。俗に言うアーリーアダプターのみなさまです。ここからキャズムを超え、マジョリティ層にアプローチしていくのは私たちの新しい挑戦になると思っています。
BABYJOB 代表取締役社長、上野公嗣(提供:DIMENSION NOTE)
──自社完結にしようとせず、アポイントはアウトソースを活用しているのが印象的です。
内製すべき部分を見極めるということが大切だと思います。
例えば我々はカスタマーサクセスチームとしてコールセンターを内製化していて、保護者・保育所さんへの案内やトラブル対応に細やかに対応しています。おかげさまで保育所のチャーン(解約)はほぼゼロです。
直近コロナの影響で行政が登園控えを促した際も、「園を休むのにおむつ代だけ払い続けるのか」という問題が発生しました。しかしスピーディにアマゾンギフトカードの還元などにより事前対策することで、トラブルを最小限に抑えることができました。
これはCSチームを内製化していたからこそできたこと。製品価値においてこだわるべき部分かどうかを見極めながら、内製化とアウトソースをはっきり使い分けることが重要だと考えています。
──非常に順調にも見えますが、何か新たな課題が生まれていたりしますか?
現在の事業課題は継続率の観点です。どうしてもトイレトレーニングを始める年齢になるとオムツの使用枚数が減少していきますので、コスパを考えてサービスの利用を停止されることが多くなっています。しかしながら保護者、保育士双方、本当はおむつを卒業するまで使い続けたい方が多く、「トイレトレーニングプラン」を作って欲しいという声をたくさんいただいています。
単純に料金体系を追加するとまた先ほどの話の繰り返しになってしまいますので、いかにシンプルさを保ちつつも、そういったご要望に答えられるかが今後の課題になっています。現在も保育所さんと一緒に研究しながらサービス開発を進めています。