「ダルバートはネパールの定食です。ダルは“豆”、バートは“ご飯”の意味で、豆のスープとご飯のセットを基本とし、そこにカレー、野菜などのおかず(タルカリ)、漬物(アチャール)、青菜炒め(サグ)、生野菜などが付いたりします。日本の定食のようなイメージですね。スパイス感はそこまで強くなく、シンプルで素朴な味わいが特徴です」
そう話してくれたのは、カレー偏愛ライターの田嶋章博氏。数々のカレー特集で執筆する気鋭のライターだ。ダルバート好きが講じて、「東京ダルバートMAP」なるものを作成し、無償で情報提供もしている。このダルバート、グーグルトレンドで検索してみると、2015年頃から検索数が明らかに増え続けている。人気上昇の理由はどこにあるのか。
「野菜が豊富でスパイスや油が控えめなので、体にやさしくて健康的なんです。またダルやカレーは旨味が前に出ているので、どこかお母さんの作る家庭料理にも通じるものがあり、日本人の好みに合う。僕は日本の定食にスパイスが入っているくらいの感覚で、週に3〜4回食べています」
中央がバートとパパド、左上の2種がカレーとダル、その横にチュカウニ(ヨーグルトサラダ)、下部 左から大根アチャール、じゃがいもアチャール、サグ、トマトアチャール、生野菜。こちらは根津にあるCHYANGRAのダルバート。
配膳は南インド料理のミールスのように、ターリーという大きなステンレスのお皿に、カトリという小器が並ぶ。「いわゆる“SNS映え”することも、人気を後押ししているのでは」と田嶋氏。確かにミールスの方はここ数年、インスタグラムで頻繁に見るようになった。
日本のカレーカルチャーは、近年ガラリと変わりつつある。以前はインド亜大陸のいわゆる“現地系”のカレーは、一部のマニアに志向されていた。ところが近年、南インド料理のミールスの人気が大きく広がり、またスパイスカレーというジャンルも確固たる地位を築きつつある。
スパイスの魅力やヘルシー志向、見た目の楽しさも相まって、現地系のカレーやそれをベースとした本格的なスパイス料理が女性ファッション誌などでも度々取り上げられるようになり、カレーカルチャーの間口は大きく広がった。あわせて、スリランカ料理、ネパール料理、ベンガル料理、パキスタン料理など、インド亜大陸料理の捉え方がより細分化し、それらのお店も増えている。
「南インド料理やスパイスカレーの人気はもちろんのこと、ダルバートも人気が高まっているのをひしひしと感じます」と田嶋氏。