メインステージで行われた「メタバースのルールメイク」では、メタバースジャパンの代表理事を務めている馬渕邦美氏(PwCコンサルティング合同会社Partner執行役員)を司会に、河合健氏(アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業)と道下剣志郎氏(SAKURA法律事務所代表弁護士)と2人の弁護士に加え、経済産業省商務情報政策局コンテンツ産業課課長補佐(産業戦略担当)の上田泰成氏を交えた4人でのセッションが行われた。
「メタバーキン事件」で考えるメタバースの法とは
道下氏はまず、実際にメタバースで起きている法律の問題を提示。1つは「メタバーキン事件」。これはエルメスの人気バッグ「バーキン」をデジタル上で模倣した「MetaBirkins(メタバーキン)」がNFTマーケットプレイスで販売された事件だ。バーキンのバッグをモチーフに、毛皮で覆ったアレンジなどがされたデザインのNFTが100件以上販売されていた。
中には数百万円ぐらいの価格をつけたものもあり、これに対してエルメスが商標権侵害を理由にニューヨーク連邦裁判所に提訴している。
道下氏は「メタバースという空間ができて、人々が今よりも幅広い場所で経済活動をしている。ただ空き地には人は集まらない。そこにコンテンツがあるからこそ集まってくる。メタバースを回すコンテンツとはなんだろうと考えたときに、NFTアートが1つあげられる」とメタバース内でのNFTアートの必要性を説明。その上で「いわゆる表現自由。こういうバッグを作りたいんだという表現をする自由。その一方で、既存の著作権も守らなきゃいけない。そういったことが争いになっていった」とのこと。
SAKURA法律事務所代表弁護士の道下剣志郎氏
河合氏は「エルメス側としては、これを自分たちが許諾したものだと思われたくないのが1点。さらに商標権や意匠権もある『バーキン』という商品を勝手に模倣されたくない。ただクリエイターとしては、自分たちの表現としてやっているという主張。これは経済活動の自由という面もあるので、どこでどう折り合いをつけるかというのがテーマで無辺的におきる」と指摘する。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業の河合健弁護士
さらに河合氏は「商標というのは基本的に国ごとに取っていくので、バーキンなどは世界中で取っていると思うが、一部の国でしか商標を取っていないとき、ではメタバースはどこでやっているのか? (メタバースは)国を超えているので、そのときにどこの国の商標を侵害したのかという問題がある」とのこと。国を超えて活動できるメタバースだからこそ、どこにルールを統一するのかという問題があるわけだ。
現行法を合わせるのか、新たな法律を設定するのか?
馬渕氏は加えて「さらにはマルチバースになっていくと、例えばアイテムを買って、別のバースへ持っていきたいなど、今後そういった問題はたくさん出てくるのでは」と指摘。国という枠組みだけでなく、メタバース内でも枠組みをがあり、ルールの統一にはハードルが高いわけだ。