香港のスタートアップの力
2020年6月に中国政府による香港国家安全維持法(国安法)が施行された香港では、民主化運動が制圧され言論の自由が奪われたが、現地では今もアニモカ社のようなスタートアップが世界から莫大な資金と才能を引き寄せている。
「暗号通貨やブロックチェーンの新興企業は、ここ数年の政治的混乱の影響を受けていない。バイナンスやFTXといった世界的取引所のルーツも香港にあるが、それはこの街が世界の金融の中心地だからで、英語を公用語とするグローバル都市だからだ」とシウは、来日直前にZoomで行われたフォーブス ジャパンのインタビューで語った。
別のアニモカ社の幹部も、「ビジネス的な観点で言うと、今の香港の苦境の原因は政治的混乱よりもむしろコロナ禍の行動制限にある」とニューヨークで行われた取材で説明した。
香港の鉄道事業者MTR(香港鉄路有限公司)は4月にザ・サンドボックスに参入し、バーチャルステーションを通じて顧客エクスペリエンスを拡大していくと発表した。英国のメガバンクのHSBCや日本のSHIBUYA109の運営元などもこのプラットフォームの利用を開始した。
中国という大国の思惑に翻弄されつつも、香港のスタートアップはしたたかに未来を見つめている。たとえ逆風のなかにあってもアニモカ社はWeb3とメタバースの中で革命を起こしているし、それは実際に人々の暮らしを変えていく。ヤット・シウと彼のチームの挑戦はまだ始まったばかりだ。