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2022.07.28 08:00

「暗号通貨の冬」こそチャンス、香港のWeb3企業アニモカの反骨精神

香港のWeb3のユニコーン企業「アニモカブランズ(Animoca Brands)」の創業者ヤット・シウ(49)は、1980年代の音楽の都ウイーンで孤独な少年時代を過ごしたが、それは彼が当時のオーストリアでは珍しい中華圏の血を引く子供だったからだけではない。

香港出身の父と台湾出身の母はともに音楽家で、幼かったシウを現地の音楽学校に通わせて、ピアノとフルートとチェロを学ばせた。しかし、彼にはプロのクラシック音楽家になるための重要な資質の一つとされる絶対音感が欠けていた。

「クラスメートたちはみんな譜面を見るだけでメロディが頭に浮かんだが、私にはそのような能力が無かった。自分はアウトサイダーなんだといつも思っていた」

そんなシウ少年が、没頭したのが父から買い与えられた初期の家庭用コンピュータだ。独学でプログラミングを学んだ彼は、楽曲データの入出力に対応するMIDIポートを備えたそのマシンで作曲ソフトを制作し、パソコン通信の掲示板で公開すると大人気になり、噂を聞きつけたコンピュータ大手のアタリ社から仕事を頼まれた。

「オフィスに顔を出すと、まだ子供だった私を見て大人たちはびっくりしていた。プログラミングの世界では人種や年齢は関係がなく、その人物が何を提供できるかが全てだ。それは、当時のコンピュータ業界でも、現代のウェブの世界でも同じことだ」と、その頃わずか14歳だった1973年生まれのシウは話す。

その後、アタリ社の援助で米国のボストン大学に進んだ彼は、20歳にして自身のスタートアップを設立。23歳のときに父親の故郷である香港に渡り、現地で初のインターネットサービスプロバイダ(ISP)の「ホンコン・オンライン」を立ち上げた。そして、ドットコムバブル初期の1998年に設立したASPサービス「アウトブレイズ(Outblaze)」の一部を2009年にIBMに売却した彼は今、世界最大級のメタバースのゲームプラットフォーム「ザ・サンドボックス(The Sandbox)」を運営するWeb3企業の共同創業者として注目を集めている。

2022年1月に評価額54億ドルで、3億6000万ドル(約490億円)を調達したアニモカ社の出資元には、ジョージ・ソロスの投資会社やフェイスブックの創業に関わったウィンクルボス兄弟が名を連ねている。
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文=上田裕資

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