ビジネス

2022.08.09

ロレアルが1500億円で買った「問題解決型コスメブランド」、奇跡への方程式

『Believe It 輝く準備はできてるか』(ジェイミー・カーン・リマ著、森田理沙訳、2022年7月、東洋経済新報社刊)

米ポートランドの地元TV局でアンカーを務めていたジェイミー・カーン・リマ氏は、深夜の連続勤務後のある日、遺伝性の、顔に赤みが出る皮膚病を発症した。

同僚スタッフや多くの視聴者に顔を見られる仕事で味わったこの辛苦をきっかけに、彼女はコスメブランド「IT Cosmetics」を創業、やがてはフェイスブックで「1日に3600回シェア」される人気ブランドに成長させた。

そして2016年、ロレアルは「IT Cosmetics」とその300におよぶ製品ラインをなんと12億ドル(約1500億円)で買収する。

ちなみに12億ドルはロレアルによる過去8年で最大の買収額。リマ氏は買収後もCEOの座にとどまったため、ロレアル108年の歴史上、傘下のブランド初の女性CEOとなったのである。また米Forbesは今年、彼女を米国の「セルフメイド・ウーマン」に選出した。

その彼女の自伝的著書がニューヨークタイムズ・ベストセラーとなって話題だが、日本でもこのたびその翻訳版が刊行された。『Believe It 輝く準備はできてるか』(2022年7月、東洋経済新報社刊)だ。

帯裏には以下のように書かれている。

「投資家:正直言って、あなたのような見た目の人から化粧品を買う女性がいるとは思えないんですよ」

「ジェイミー(心の声):彼の言うとおりなのだろうかと思いながら、心の奥底では、彼は間違っている、という圧倒されるほどの直感を感じていた」

──この話題書の一部を以下、一部再編集の上、抜粋転載で紹介する。


「成功する証拠などどこにもない」


まったく新しいアイデア、商品、そしてビジョンを手にした時に、専門家たちがその成功を信じてくれなくても、それは驚くべきことではない。成功する証拠などどこにもないからだ。そんなものあるはずないわよね? 誰もやったことがないんだから。

善意で進言してくれる専門家たちは多くの場合、実際に自分で何かを生み出したり、築いたりしたことはない。彼らは自分には先見の明があると信じているかもしれないけれど、初めて見るものが成功する姿は想像できないことが多い。

起業家として、もっと早くそのことに気づいていたなら、泣き寝入りした多くの夜から自分を救ってあげられただろう。

未開の地に参入するために、専門家のために作り上げた心の中の玉座から彼らを引きずりおろし、自分の直感をそこに座らせなければならない時がある。何をすべきか伝えてくる、小さくてハッキリした内側の声に耳を澄ます必要がある。そして、それを実践する自信と勇気を持つこと。その瞬間に、自分がどういう人間なのかが決まるのだ。

専門家の意見に耳を傾けていれば、私たちは販売目標を達成したかもしれない。呼び戻してもらえるごくわずかなブランドの1つにだってなれたかもしれない。でもそれは、自分たちのウソ偽りないミッションを貫くことではなく、みんなと同じことをするだけになっていただろう。
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