日本政府関係者の1人はロシアの当面の目標について「ノヴォロシアを含めて、9月11日の統一地方選を行いたいのではないか」と語る。ノヴォロシア(新しいロシア)は帝政ロシア時代に征服した黒海北部の地域などを指す。そこには、すでにロシアが掌握した地域のほか、南部の港町オデーサも含まれている。プーチン大統領は5月9日に行った戦勝記念日の演説でもオデーサの地名に触れるなど、ノヴォロシアを意識した発言を過去に繰り返してきた。
米ブルームバーグ通信も7月21日、ドネツク、ルハンスク、ヘルソン、ザポリージャの各州で9月前半に、ロシアへの併合の是非を問う住民投票が行われる見通しだと伝えた。この4州では、住民投票の直後にロシア統一地方選を実施する考えなのかもしれない。ロシアとしては可能であれば、オデーサまで掌握したい思惑は十分あるだろう。
ただ、ドンバス地方をみても、ロシアはルハンスク州を掌握したものの、ドネツク州のクラマトルスクやスラビャンスクなどは依然、抵抗を続けている。南部の場合、ロシアは23日、オデーサにミサイル攻撃を加えたが、オデーサまで進軍する力は今のところないようにみえる。
自衛隊の元幹部は「単純に考えて、兵士と装備で、ロシアとウクライナのどちらが、敵を圧倒できるかという問題だろう」と指摘する。「兵士でいえば、攻撃側は守備側の3倍は必要だ。ロシアが現在、ウクライナに投入している兵力は15万人ほど。ウクライナは元々20万程度の兵力だったが、30万程度まで増やしている。最大で100万人まで増やせるとも言われている」という。