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2022.07.26 17:00

ついに日本に上陸 時価総額世界3位の中国EVメーカーの勝算

BYD ジャパン 代表取締役社長 劉 学亮

BYD ジャパン 代表取締役社長 劉 学亮

EV(電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)を合計した新エネルギー車(NEV)で中国最大のシェアを占め、2022年6月には時価総額が1兆元(約20兆円)を突破し、世界の自動車メーカーの中で米テスラ、トヨタ自動車に次ぐ3位に躍り出た中国BYDが、2022年7月21日に日本の乗用車市場に参入すると発表した。これまで乗用車には進出しないとしてきたBYDが、ここに来てなぜ方針を転換したのか。その勝算はどこにあるのか。日本法人であるBYDジャパンの劉学亮社長に聞いた。
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Forbes JAPAN(以下F):日本市場へEVの進出を決めた理由は。

BYD 劉学亮社長(以下劉):日本の乗用車市場への参入をこのタイミングで決断したのは必然だった。BYDは27年前の1995年に中国で創業したが、99年には日本に進出し、多くの日本の電機メーカーにバッテリーを中心とする部品や技術を供給してきた。2015年には中国のEVバスを初めて日本に持ち込み、京都で運行が始まった。現在日本で走っているEVバスの7割以上はBYD製だ。15年には電動フォークリフトも日本に導入しており、現在約400台の電動フォークリフトが日本各地で活躍している。

多くの日本企業が当社の中国本社を訪れるが、そこで誰もが同じ質問をする。「BYDのEVはいつ日本に進出するのか?」というのがそれだ。このように、日本の乗用車市場への進出を突然決断したわけではない。BYDが20年以上の長い時間をかけて日本社会の一員になってきた結果としてたどり着いたのだと考えている。
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劉学亮:流暢な日本語を操り、日本のEV市場参入の思いを語る

F:22年5月にはBYDジャパンの役員が乗用車市場への参入に否定的な姿勢を示していた。そこから2ヶ月で方針を転換したのはなぜか。

:技術は常に進化するものであり、また市場で求められるものも変化する。乗用車市場に進出するためには、ただクルマを販売するだけではなく、メンテナンスやローンなどあらゆる面の準備が必要になる。いかに日本の消費者に安心を届けられるかということが大切だ。今回、乗用車市場への参入を発表したのは、すべての準備が整ったのがそのタイミングだったということだ。

F:日本はものづくりの国であり、日本の消費者は品質やデザインに非常に厳しい。こういう市場に参入するにあたって勝算はあるのか。

:当社は10年に自動車用プレス金型で高い技術を持つ日本のオギハラの館林工場を買収した。プレス金型はクルマを製造するうえで最も重要な基本技術であり、オギハラを買収したのは当社の創業者である王伝福 (※)が日本の技術に敬意を払っている証拠だ。

技術の原点は人であり、オギハラの買収によって当社は日本のものづくりを学んだ。現在のBYDのクルマの美しい外観には、オギハラの買収によってプレス金型の技術が飛躍的に向上したことが大きく貢献している。当社が乗用車市場に進出するということは、日本に学んだものづくりの魂をEVに乗せて再び「日本に返す」ことだと考えている。その意味で、勝つか負けるかではなく、日本のメーカーと共存共栄していくことを目指している。

※王伝福(BYD創業者。貧しい家庭にあり早くに両親を失うも、苦学してバッテリーを研究する会社に就職。のちにBYDを創業。携帯電話のリチウムイオンバッテリーからスタートし、EVへ進出。成功を収める。Forbes USのビリオネアにも選ばれた)
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文=鶴原吉郎 写真=西川節子(人物)

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