この脳活動センサーは、脳の表面から記録破りの解像度で電気信号を読み取ることができる。この開発が進めば、脳神経外科医が健康な組織と疾患組織を区別できるようになり、人間の脳の働きについてより理解を深めるのにも役立つと言われている。
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「極薄の助手」が脳の領域内を分析
この脳活動センサーは、カリフォルニア大学サンディエゴ校の技術者によって開発が進められており、いわば皮質脳波検査(ECoG)センサーと呼ばれるものだ。ECoGセンサーは、手術中に露出した大脳皮質に装着することにより脳が発している電気信号を記録し、脳組織のどの領域が活動しているのかを特定するのに使われる。これにより、脳神経外科医が健康な組織を残したまま脳腫瘍やてんかん性発作の原因となる組織の一部を安全に切除することも可能になる。また、新たに柔軟性に優れたセンサーグリッドを使用しているため、脳と共に移動し、より鮮明な測定値を得ることが可能だ。カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者たちはこのセンサーグリッドを使い、健康な脳組織を保存することを目標に開発を進めている。現在使われているECoGセンサーのほとんどが約16〜64個で構成されているが、最近では最大で256個まで搭載できるものもある。一方で、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームによる技術革新により、1024個か2048個のいずれかのセンサー数を使ったECoGグリッドを製造することに成功した。
臨床上での使用を承認されたECoGグリッドは、センサー間の干渉を避けるために、センサーの間隔が1センチメートル(0.4インチ)離れているのが特徴的である。ナノスケールの棒状粒子は、現在使われている平板の白金センサーよりも検出面積が広く、単位面積あたり1個ではなく100個のセンサーを配置でき、空間分解能は100倍となる。
この白金棒は、柔軟で生体適合性のあるパリレン(parylene)という材料上に1ミリ間隔で配置され、センサーグリッドの厚さは約10マイクロメートルと、現在使われているものに比べて約100倍薄い。これは人間の髪の毛の10分の1程度の厚さである。
1024個のセンサーを搭載
実験では、1024個のセンサーを搭載したものを使い、19人の手術患者の脳組織から直接信号を記録した。また、4人の被験者の脳の主要な領域をマッピングし、その結果をもとにネズミの脳の皮質柱をマッピングすることにも初めて成功した。研究チームは現在、この技術が治療抵抗性のてんかん発作や脳腫瘍の患者に役立つよう、臨床試験で医療現場での使用認可の取得を目指している。
さらに、このセンサーで指の感覚や手の握り方に関連する脳活動をモニターし、自分の意思で制御できる義肢の開発、記憶喪失者の治療、スマートフォンを必要としない対話方法などの分野の研究も進めているという。
本研究は、Science Translational Medicine誌に掲載された。
(この記事は、英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」から転載したものである。)