ビジネス

2022.07.28

事業拡大期に直面する「組織のカオス化」サステナブル・ラボはどう突破したか

平瀬錬司(提供=サステナブル・ラボ)


回避策:譲れないポイントを伝え、それ以外は全て受け入れる


組織運営で苦労した末に、平瀬が導き出した答えがあった。「“ビジョン共鳴”と“スタートアップ・リテラシー”だけは譲らない。それ以外の多様性は全部受け入れ活かす」というもの。経営者としての覚悟を決めた出来事だった。

サステナブル・ラボは、チームの究極ゴールであるビジョン、「強く優しい世界をつくる」に基づき、「『強さ』と『優しさ』の両立」を据えた組織運営を行っている。言い換えるなら、自分だけが結果を出す、経済利益だけを生み出す、は正義ではなく、チームの一員として周りの助けとともに結果を出す、また仲間や社会へのグッドインパクトをも生み出すのが正義だということだ。

また、ビジョン以外で譲らないと決めたのは、スタートアップ・リテラシー。同社は、あらゆる業務をアジャイル型(=計画が生煮えでもとにかく動き、進みながら素早く軌道修正を繰り返す)で動くことを指している。

「弊社には大手金融やアカデミア出身者が多く、ウォーターフォール型(=じっくり計画を煮詰めてから動く)タイプのメンバーも多数いました。こういった『やり方の多様性』は許容しないと決めたんです」

ビジョンとスタートアップ・リテラシーは譲らないが、それ以外は個々人を信じ、任せる。明確な組織方針を掲げた平瀬は、この判断をどう振り返るのか。

「いまのところ良い判断だったと思います。目に見えてチームの雰囲気が明るくなり、全体で見たときのスピードとレベル感が確実に上がったからです。各人がオーナーシップを持って取り組み、新たなアイデアが飛び出るようになりました。私自身も肩の荷が降りましたね。個々人に任せたことで、経営者としての“べき論”を手放せたんです」

最後に、サステナブル・ラボの今後の展望を聞いた。

「組織運営は現在も試行錯誤中ですが、世界で戦えるカラフルなチームを作り上げていきたいです。事業としては、強さだけが勝つ社会から、『強く優しい』が当たり前になるように、働きかけ続けたいと思います」

経営者がオーナーシップを独占する、組織がカオス化するという問題は、どのようなスタートアップでも起こりうるだろう。

今回は「手放す」がキーワードだったように思う。経営者として必要なものは、リーダーシップだけではなく、社員にオーナーシップを渡す勇気。そして、「経営者としてこうあるべきだ」というプライドを捨てる覚悟。ぜひ、参考にしてみてほしい。

文=畠山和也 編集=露原直人

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