回避策:プライドを捨てる
当時平瀬は、あらゆる仕事を抱え込み、一人で回しきれない意思決定・業務執行を抱え、徹夜に近い状態が数週間も続いた。何度か体調も崩した。家族との関係も崩壊寸前まで追い込まれた結果「自分一人だと“早く”は行けるが、“遠く”には行けない」ということに気付いたという。
「私たちの会社は今、北極星を目指して走っているような状態。そこに到達するには、個の力では絶対に無理だと悟り、小さな挫折を何度も経験したんです。それを心から受け入れたときに、自分の中でブレイクスルーが起こったんですよね」
もはや、一人の手では負えないところまできている。それなら、自分が変わらないといけない。「一言でいえば、無駄なプライドを捨てたんです」と平瀬は語る。
弱みをさらけ出して、人に甘えるようになり採用活動では、自分にはないものを持つ人を探すようになった。いつしか人に自然と敬意を持ち、助けてください、と頭を下げられるようにもなった。
経営者の顔から、組織のリーダーの顔へと変化していったのだ。
あるある2:組織が多様化し、カオスになる
平瀬のマインドの変化を起点に、メンバーも順調に増えていったサステナブル・ラボ。現在は30人強の社員数で、採用を強化しているという。
個人商店から組織として拡張し続けている同社だが、数年前にある一つの課題とぶつかっていた。多様化が進んだ結果、組織の統率が取りづらくなったのだ。
平瀬は、ESG/SDGsデータサイエンスという、世界的にも確立されていない領域に挑むチームを強化するため、多様性を受け入れていった。結果として、メンバーは計9カ国、半数以上が外国人、になったという。近年注目されるダイバーシティ&インクルージョンの観点でいえば、理想的な組織といえるだろう。
しかし、現場では日々、考え方や価値観の違う者同士の議論が繰り広げられ、疲弊感に包まれていた。全員で北極星を目指すはずだったにもかかわらず、実際には一人ひとりの時間感覚や進め方が異なっていたのだ。
「カオスだった」と平瀬は振り返る。
スタートアップの組織運営ではよく、「30人の壁」「50人の壁」「100人の壁」という表現がされる。創業後はメンバーも少なく、コミュニケーションも円滑で、仲間意識が生まれやすい。しかし規模が大きくなるにつれ、歪みが生まれる。サステナブル・ラボも例外ではなかった。