ビジネス

2022.07.24 08:00

無謀な領域への挑戦もいとわない。モデルナを育てた並行起業とは

Forbes JAPAN編集部

規模は、レパートリー・イミューン・メディシンズにとっても重要だ。同社を運営するジョン・コックスはバイオテック業界のベテランで、バイオベラティブを116億ドルでサノフィに売却した取引をまとめた人物だ。レパートリーは免疫系の構造を解明しようとしている。コックスによれば、自己免疫疾患の大半は、人間の体を感染症から守る役割を果たすT細胞の異常行動に関連している。

「T細胞が多発性硬化症の原因となる脳の病変を引き起こす理由を解明できれば、この病気を治療する適切な免疫医薬品を開発できる可能性があります」

まさにアフェヤン流の大きなアイデアからスタートしたレパートリーは、すでに3億5000万ドル以上を調達している。投資家に名を連ねているのは、ソフトバンクやアラスカ・パーマネント・ファンドなど。ほかのフラッグシップ発の企業と同様、同社もいわゆるプラットフォーム企業だ。

アフェヤンは、プラットフォーム企業にすることで、同社のポートフォリオに並ぶスタートアップ企業のリスクを低減し、そのどれであっても、必要に応じてひとつの分野から別の分野に移行できるようにすると主張する。モデルナが新型コロナのワクチン開発でそうしたように。

アフェヤンは言う。

「バイオテック業界では、ひとつの製品が成功する確率は非常に低い。モデルナは10億ドルの資金を調達しましたが、それでも『どうすればモデルナになんて投資できるんだ』と言われたものです。そのモデルナは、新型コロナウイルスのゲノム配列が発表された2日後にワクチンを開発した。そうなると、価値があるのはワクチンなのか、プラットフォームなのか。私は、墓に入るときになってもプラットフォームのほうだと信じているでしょう」


Flagship Pioneering フラッグシップ・パイオニアリング◎新型コロナワクチンを開発したモデルナを生み出したベンチャー投資会社。2000年、ヌーバー・アフェヤンが創業した。本部は米マサチューセッツ州ケンブリッジ。バイオテクノロジー、ライフサイエンス、農業分野の科学的アイデアの事業化にインキュベーター的に取り組む。約70社を立ち上げ、うち30社が上場している。

Noubar Afeyan ヌーバー・アフェヤン◎フラッグシップ・パイオニアリングの創業者兼CEO、モデルナの会長でもある。1962年、レバノン・ベイルート生まれのアルメニア人。75年にレバノン内戦を避けて一家でカナダへ。後に米国に移り住んだ。83年にマギル大学を卒業、87年、マサチューセッツ工科大学(MIT)で生物化学工学の博士号取得した。

文=エイミー・フェルドマン 翻訳=木村理恵 編集=森裕子

この記事は 「Forbes JAPAN No.094 2022年月6号(2022/4/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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