研究チームが話を聞いた住民の一部は、中年期をできる限り引き延ばすため高齢者居住地区に住むことを決めたと説明。健康をできるだけ長く保ち、アクティブで自立した生活を送りたいと考えていた。一方、体が弱り健康が全体的に悪化しているため、安全についての懸念から高齢者居住地区への入居を決め、高齢者居住地区に支援を期待していた人もいた。
こうしたニーズは互いに対立している場合が多かった。よりアクティブな生活を求める住民は、体が弱く手厚い支援を必要とする住民の受け入れや支援を拒む傾向にあり、体が弱い年長の住民に足を引っ張られて自分の活動が制限され、より年をとっているように感じると不平を漏らしていた。
万人向けの解決策はない
全ての居住者に対して均一なアプローチをとることで、高齢者居住地区の中では分断が生じていた。アクティブではない人は、より活動的な住民と一緒にされることで疎外感を持ち、アクティブな人は他の住民の活動不足が自分にも影響を与えるのではと懸念していた。
この研究結果は、米スタンフォード大学ディスティングイッシュト・キャリア研究所(DCI)で「dciX」プログラムのディレクターを務めるスーザン・ゴールデンの意見とも一致する。ゴールデンは、加齢についてのより細やかな理解が必要だと主張している。
ゴールデンは最近の著書『STAGE(Not Age)』で、人の年齢をこれまでのような3段階ではなく18の段階に分け、年齢や加齢に関する細分化した理解を促している。20歳の人と50歳の人が同じニーズや問題を持っているとは考えないのに、60歳の人と90歳の人が同じだと思い込んでしまうのはおかしいだろう。