資本主義のアップデート、再構築の中心的役割を担い、これからの経済、社会の「新しい主役」となり「ポジティブな未来」をつくる、大企業、スタートアップ、投資家、資本市場など、世界で躍動し拡張している「インパクト・エコシステム」の全容を見ていく。
特集は、その象徴的な存在とも言える、日本を代表する「インパクト・スタートアップ」8社(五常・アンド・カンパニー、READYFOR、ライフイズテック、WOTA、ユニファ、ジーンクエスト、ALE、ヘラルボニー)が一堂に介した座談会から始まる。WEB版では3回にわけて掲載していく。
第1回:「ポジティブな未来計画」論!インパクト・スタートアップの現在と今後
第2回:ポジティブな変化に貢献するインパクト・スタートアップの本質とは
コミュニティ、エコシステム形成へ
前田:ある分野が立ち上がり、世の中にとって重要だとなっていくときに共通しているのは、マスターピースの登場です。私たち自体が事例となることで、「社会的インパクトを起こすスタートアップ」というコンセプトが具体化され、求心力が生まれる。
私たちの場合、小規模分散型水循環システムが3つのコストを実現し、人類共通のプロダクトと認識され、ビジネスとして成長し、水問題を構造的に解決できることを示す。このような事例の連鎖が、「インパクト・スタートアップ」という現象を加速させるのだと思います。
水野:ライフイズテックは、教育業界でどんどんイノベーションを起こし続ける会社でありたいし、企業価値が1兆円を超える存在を目指しています。利益を出し、会社も大きくなり、社会も変わる。それができる時代なのだと具体的に示したい。
慎:当社は、上場したらかなりの額のキャピタルゲインがグループ社員に分配されるようになっています。そして、私の同僚たちは、手にしたお金をそれぞれが社会的意義を感じる事業に使っていくと私は信じています。当社の上場がインパクト・スタートアップのエコシステムのはじまりになったらいいと思っています。
もちろん、会社経営は楽しい話ばかりではありません。目的が美しいと組織内部も美しいと思われがちですが、成長する組織には摩擦と混沌がつきもの。そんな現実も受け入れながら、さまざまな問題や課題を一生懸命解決しようとしていることは理解してほしいです。
岡島:私は社内のチームビルディングで一回、大失敗したことがあって。私がやりたい方向とチームの方向性とがずれてしまい、結果的にチームごといなくなってしまいました。その苦い経験を経てビジョン、ミッション、バリューをわかりやすく言語化し、そこに共感する人たちを集めたことがいまの経営に生きています。
岡島礼奈◎ALE創業者兼代表取締役CEO。1979年生まれ。東京大学大学院理学系研究科天文学専攻にて博士号(理学)を取得。大学院修了後、ゴールドマン・サックス証券戦略投資部の債券投資事業を経て、ビジネスコンサルティング会社の副社長に。2009年から人工流れ星の研究をスタートさせ、11年9月にALEを設立。
星:そもそも、私たちの挑戦はとても難易度が高いです。一般的に社会性と経済性は対立した概念だととらえられているし、昨今のように資本市場が激変したりすることも当然ありえます。
それでも私には、正しいことをやっているという信念があります。社会性と事業性は両立すると心から信じているし、よい社会や未来をつくるために両立させたいと強く思っている。