米良:自治体など課題感を共有する方々との連携なども大切ですよね。
前田:はい。WOTAのプロダクトは、スケールエフェクトやラーニングエフェクトが働くモデルなので、参加していただくほど3つのコストが下がり、課題解決のスピードが上がります。私たちはホームページ上でマスタープランを公開しています。
メンバーや株主はもちろん、お客様やユーザーも水問題解決のプロジェクト参加者。コンセプトやマイルストーン、インパクトなどを共有しつつ、みなさまの参加が何につながるのかを可視化しています。コミュニケーションを改善することで多くの方々を巻き込むことができると考えています。
岡島:いまの資本主義社会では、お金でしか価値を図ることができないのがしんどいです。皆さんのサービスやプロダクトが世に普及したときの人類の生存確率の上がり具合とか、幸せ指数の変化とか、新たなモノサシで数値化できると、お金を稼ぐだけではない世界に向かいやすくなります。
高橋:お金の指標以外のサステナブルな指標を導入できるといいですよね。資本主義のモノサシだけだと、人類も地球も終わると私は本気で思います。
高橋祥子◎ジーンクエスト代表取締役、ユーグレナ執行役員、東北大学特任教授。1988年生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍中の2013年に起業。15年3月に博士課程を修了。18年4月よりユーグレナ執行役員バイオインフォマティクス事業担当に就任。21年より文部科学省科学技術学術審議会委員を務める。
米良:五常・アンド・カンパニーはグループ全体でインパクト指標を導入し、20年から「インパクトレポート」を発行していますよね。
慎:インパクト投資の概念を初めて打ち出したのはロナルド・コーエンですが、彼が創業した社会的投資顧問会社ソーシャル・ファイナンスで働いていたメンバーが入社したタイミングでインパクト測定を本格化させました。
弊社の個人株主はほぼ100%、法人株主は8割が、ビジョンやミッションに共感したのが投資理由の第一位であると回答しています。なので、社会にインパクトを出さないことはステークホルダーへの裏切りになる。標準化されたインパクト指標を開発し、測定し、結果を伝えることは最も大切な仕事のひとつだと位置付けています。
インパクトはすごく多義的な言葉で、社会変化において自分たちがどれくらい貢献したのかを科学的かつ誠実なかたちで計測するのはとても難易度が高いです。それでも、今日集まった皆さんの事業の中心にあるのは、やはり社会や未来に対するインパクトです。財務数値のみならず、自分たちのインパクトKPI(重要業績評価指標)に基づいて経営していくことが重要だと思います。
社会性と事業性との両立を実現する企業を言い表すのなら、私は「インパクト・スタートアップ」という言葉がしっくりきます。
(次回へ続く)