そして最近の燃料価格の高騰にともない、最もみじめな自動車犯罪の1つであるガソリン盗難に地域の警察が目を光らせているという全米保険犯罪局(NICB)の報告は驚くにはあたらないだろう。
クルマ利用者を苦しめた1970年代の燃料不足のときには、泥棒は自分のクルマを走らせるために駐車中の他人のクルマから1〜2ガロン(約3.8〜7.6リットル)を簡単に吸い上げていたが、最近の泥棒は悪事を働くのに大きな損害を残していく。
というのも、現代のクルマには「ロールオーバーバルブ」と呼ばれる、万が一衝突したときにガソリンが路面に漏れ出すのを防ぐための技術が搭載されているからだ。この技術によって、タンクから燃料を吸い上げることは非常に難しくなっている。
NICBによると、駐車中のクルマのガソリンタンクに直接穴をあけて燃料を抜き取るという悪質な手口が横行している。その結果、クルマの所有者は数ガロンのガソリンを失うだけでなく、タンクを交換するための高額な修理代が発生する。自動車修理のウェブサイトRepairPal.comによると、税金や手数料、必要な関連修理費を除いた平均費用は1300〜1400ドル(約18〜19万円)という。
フルサイズのSUVやピックアップトラックなどの大型車は燃料タンクの容量が大きいため、他の車種よりも窃盗の対象となると米自動車協会(AAA)は指摘する。たとえばフォードのF-150ピックアップトラックの燃料タンク容量は36ガロン(約136リットル)だ。1ガロン5ドル(約700円)のレギュラーガソリンで満タンにするには180ドル(約2万5000円)かかることになる。
さらに、燃料の盗難はコソ泥に限った犯罪ではない。さらに巧妙な手口で行う泥棒は、より大量の燃料を盗むために直接その供給元をターゲットにしている。NICBによると、さまざまな手口でガソリンスタンドのポンプをハッキングして、あるいは貯蔵タンクから直接ガソリンを盗み、小売価格よりかなり安い値段で販売しているケースがあるという。
NICBの社長兼CEOのデイビッド・グローは「自動車犯罪ほど全米で深刻化している犯罪はない。犯罪はビジネスであり、自動車関連犯罪のビジネスは多くの地域で非常に好調だ」と指摘する。
NICBは消費者に対し、自分のクルマが盗難の標的になるのを防ぐために、常識的な予防策をとるようアドバイスしている。つまり、可能であれば車庫に駐車し、少なくとも明るくて人通りが多く、できれば監視カメラが設置されている場所に駐車することだ。また、車を走らせる前にガソリンタンクが空で、もしかすると損傷していないか確認するために、車両の下に水たまりがないか見て、さらに燃料計をチェックすることを勧めている。