好きなことが入り口 メタバースで活躍するアーティストは新しい舞台をどう感じているのか

メタバースで活躍する現役のアーティスト3人によるセッション


さわ氏は個人同士がつながる上で、メタバース特有の距離感について「3年くらいに前なるが、メタバース店舗というのを作って、せきぐちさんにも接客のお仕事をお願いした。そこから初めて顔を合わせてあったのが1年くらい前。そのときに初めてあった気がしなかった。アバターで交流できていたから、もう何回も会ったことがある友だちみたいな感じ」とメタバース空間と現実空間に境目がないと話している。

さらに天野氏は「個人が企業に所属しなくてもい時代になっている」と指摘する。「作り方も変わってきていて、企業でも一部のシステムを請け負って、それを組み合わせてすすめる。本当に自由になった」とこと。大きな企業がすべてを作るのではなく、個人や小さいグループなどが、自分の得意とすることを持ち寄ってプロジェクトを進めていくというシステムがメタバースでは現在一般的になっているわけだ。


人気のオンラインゲーム「ソードアート・オンライン」のVRイベントなどは天野氏が制作企画から開発までを担当した

また、さわ氏は表現の方法もこれから大きく変わってくると話しており「何かを作って発表する場合、もの自体は100%作れるけど、発表するときに自分の体自体が邪魔になったとかで理想が100%そのまま伝えられない。それがデジタルの空間を活用すると、どういう場所でどういう姿でどういう声で届けるかというところまで作ることができる。これがめちゃくちゃ大きい」とのこと。つまり発表する「もの」だけでなく、発表する「こと」も合わせて、トータルで制作できるというわけだ。


さわ氏が手がけている世界最大規模のVRイベント「バーチャルマーケット」

さわ氏は「それによって表現の幅も変わるし、自分ひとりでできなかったこと、リアルな世界にできなかったことが、今デジタルやメタバースを使えばできるようになる。(発表会を)会場から作るとか無理。でもアーティストがいたらそれができちゃう」とも話している。

スピードが早いからこそ追いすぎてはいけない


天野氏も「iPhoneは誰が作ったかもわからない。ジョブスが作ったというのは間違いないが、デザイナーの成果なのか? エンジニアの成果だったのか? プロダクトの成果なのかわからない。アメーバのようにクリエイティブが絡まってできたおもちゃですよね。(iPhoneみたいな)ああいうものってもっと存在していると思っています。作るという点でいえばそこに個人アーティストとして関わりやすくなった」と解説していた。


せきぐち氏は、コロナ禍前は、日本だけでなく世界各地でライブイベントを行っていた

しかし、せきぐち氏は「個人的にはあらゆる面ですごいチャンスも広がったが、移り変わりがすごい激しいタイミング。そのトレンドを追いすぎて、何かを崩してしまうのも良くない」と指摘。さらに「タイミングをつかむことは大事だが、アーティストや守るべき大きなIPがある企業とかは、自分達が何をするべきなのかとか、何をしていくのかを大事にしながら、この目まぐるしさに流されていかないよう気をつけなければいけない」と話していた。

文=中山智 編集=安井克至

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