しかし、これまで距離があるとされていた両者が融合し、Win-Win、あるいはそれ以上の結果を生み出すのは簡単なことではない。
Forbes JAPANは2022年春、そのカギは“アーティストが世界と向き合う姿勢”にあると考え、別冊「ART AS AN ATTITUDE アート・ドリブンな未来入門」を発売。企業がアートやアーティストと革新を起こしたビジネスケース、社会や経済との新たな関わりをつくり出した取り組み、アートとビジネスの越境による試みを俯瞰してまとめた。
その別冊でアドバイザーを務めた一人が、キュレーター / NYAW代表 / 一般財団法人東京アートアクセラレーション共同代表の山峰潤也。六本木のアートコンプレックス「ANB Tokyo」の企画運営、エイベックスが手がけるアートフェスティバル「MEET YOUR ART FESTIVAL “New Soil”」のキュレーションをしている。
アートのど真ん中である美術館を経て、日本のアートシーンの第一線で活躍する彼は、その課題と可能性をどのように見ているのか。別冊の監修を務めたアーツ・アンド・ブランズ代表の笠間健太郎が聞いた。
──東京都写真美術館や金沢21世紀美術館などの公⽴美術館の学芸員を経て、現在は“美術館の外”で仕事をされています。軸を移した経緯ついて教えてください。
まず、東京都写真美術館の学芸員になったのは、学生の頃からアルバイトとして身をおいていたこともありますが、当時の福原義春館長に文化庁メディア芸術祭時代の仕事を見ていただいたことがきっかけにありました。
元々作家を目指していたということもあって、アートの世界で生きていくためには自分の世界観を表現してバイネームで存在感を発揮していく必要があると思っていました。そのためには美術館で作法を学んで、この世界で信用を得て力をつけていくことが不可欠です。そして、美術館というメディアを通して、社会に向けた自分なりのメッセージを表現する機会につなげていく、そういう意識を持ちながら仕事していました。
東京都写真美術館に入った当初よりコレクションを活用した展覧会や恵比寿映像祭のキュレーションに関わってきましたが、2018年、水戸芸術館で、自分のシグニチャーとなる展覧会「ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」を作ることができ、これが大きな転機になりました。
それまでキャリアを積んでいくことに必死でしたが、そこから急に、自分というキュレーターの置かれている立場やミュージアムの状況が客観性をもって見えてきたんです。特に地方の美術館にいたこともあって、税収が減ったしわ寄せがくること、美術館の観光資源としての効果が問われることも視野に入ってきました。