その背中痛、鬱、姿勢のせい? 「WYTエクササイズ」で整える

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悪い姿勢がもたらす悪影響


悪い姿勢が習慣になると、大きな犠牲を払うことになりかねない。痛みがひどくなると、買い物袋を運んだり、車を運転したりといった単純な作業ですら難しくなることもある。「猫背が癖になっているなど、筋肉が長年縮んだままでいると、筋肉の柔軟性が低下し、運動はもちろん、ごく簡単な活動でさえ難しくなり、痛みが生じる場合もある」とジャンは言う。

悪い姿勢がもたらす典型的な症状を以下に紹介する。

・背中と首の痛み

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「悪い姿勢によって背骨に負担がかかると、椎間板や筋肉が損傷し、首や背中に痛みが生じやすくなる。骨密度が低下していると、脊椎骨折を引き起こすこともある」とカッツマンは言う。

近年特に多いのが「テキスト・ネック(スマホ首)」と呼ばれる症状だ。ずっと下を向いて携帯電話やノートパソコンやタブレットを見続けていると、背骨に負担がかかり、首の痛みや疲労を引き起こす原因となる。

・呼吸が浅くなる

だらしない姿勢、とりわけ座ったときの崩れた姿勢は、呼吸に悪影響を及ぼす。2018年に科学雑誌『バイオメド・リサーチ・インターナショナル』に掲載された小規模研究によると、男性35人の呼吸の強度を測定したところ、まっすぐに座った人よりも、崩れた姿勢の人のほうが呼吸が浅くなることがわかった。

また、歩くときや立ったときに頭が前に出る「頭部前傾姿勢(FHP)」も、呼吸量を低下させる。『理学療法科学ジャーナル』に掲載された小規模研究では、男性15人をふたつの異なる姿勢のグループに分けて呼吸を分析した。背骨をまっすぐに保った姿勢と、頭を前に出した姿勢とを比較した結果、頭を前に出して座ったグループの呼吸量が少ないことがわかった。

・慢性的な障害

『人間工学ジャーナル』に掲載された研究によると、悪い姿勢は習慣になりやすく、仕事で長時間パソコンを使う人は特にその傾向が強い。そうした姿勢の問題が慢性的な体の障害を引き起こすこともある。前かがみの姿勢や崩れたままの姿勢が長期にわたって繰り返されると、背骨が圧迫されて脆くなり、怪我をしやすくなるという。

「中高年が脊柱管狭窄症(脊髄の神経が通る脊柱管が狭くなって、神経が圧迫された状態)になると、前傾姿勢を取りがちになる。前かがみになることで脊柱管が広くなり、神経への圧迫が軽減されるからだ」と、カリフォルニア州ロングビーチ記念・ミラー小児医療センターで脊椎・脊柱側弯症外科医を務めるクシャグラ・ヴェルマ医師は言う。「おそらく、それが中年以降の成人の姿勢が悪くなる一番の原因だろう」

「加齢とともに背骨の変形が進み、胸椎が極端に後ろに曲がる脊椎後弯症などに発展することもある。その場合も前傾姿勢につながりやすい」とヴェルマ医師は言う。「これらは脊椎の構造的な問題であることが多く、痛みや障害がひどい場合は、手術が必要になる場合もある」

・気分の落ち込み

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気分は姿勢に影響するが、姿勢もまた気分に影響する。ある研究では、崩れた姿勢になりがちな鬱病の人々に背筋をまっすぐ伸ばして座ってもらったところ、疲労感や不安感が軽減し、言葉を発しやすくなるのがわかった。

大学生を対象にした別の研究では、猫背になって歩くと、活力レベルが低下するのがわかった。特に抑うつ状態に当てはまる生徒はその傾向が強かったが、スキップをすると、彼らの活力レベルは上昇した。
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翻訳・編集=大谷瑠璃子/S.K.Y.パブリッシング/石井節子

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