問題となっているのは、食品や塗料、化粧品などの漂白剤や光沢剤、固結防止剤としてよく使われる二酸化チタン(TiO2)。添加物としては新しいものではなく、1940年代後半から使われ始め、この数十年さまざまな製品に使用が広がってきた。
だが、欧州では今年、専門機関の勧告を受けて、この粉状の物質は食品添加物(「E171」として認可)としての使用が禁止されることになった。マースは2016年に、キャンディー製品での使用を2021年までにとりやめる方針を示していたが、2022年になっても添加物の使用状況は変わっていなかったとされる。
USAトゥデーによると、カリフォルニア州の住民が今月14日、スキットルズは多量のTiO2を含み、消費者にとって安全ではないとして、カリフォルニア州北部地区連邦地裁に集団訴訟を起こした。原告側はスキットルズについて、「人間による消費には適さない」とまで主張している。
TiO2が人体に害をもたらす可能性があると懸念される主な理由は、それがナノ粒子と呼ばれる微細な物質である点だ。ナノ粒子はその名のとおりナノ(10億分の1)メートル単位の小ささであるため、経口摂取や皮膚を通じて、血液と脳を結ぶ経路に入り込むことができる。
もっとも、微細だから即有害というわけではない。実際、医療分野ではナノテクノロジーを活用することで、がんや免疫障害といった病気の標的を絞った治療法が可能になっている。TiO2のような特定のナノ粒子の安全性、とりわけ消費者の使用に関する安全性については、さらに明確にされる必要がある。
欧州では、欧州連合(EU)の専門機関である欧州食品安全機関(EFSA)が食品添加物としてのTiO2の安全性を再点検するため、毒性や発がん性などの評価を行った近年の研究を再検討。その結果、摂取した場合に直接あるいは潜在的な健康リスクがあるとした研究はほとんど見つからなかったものの、疑問や懸念も解消しなかったことから、5月に食品添加物の認可リストから除外するよう勧告した。
米国では食品添加物としてのTiO2の使用禁止はまだ承認されていない。そのため懸念が持ち上がり、今回、スキットルズなどでそれを使い続けているマースに対して訴訟も起こされたというわけだ。原告側は、マースがカリフォルニア州の消費者保護法に違反したとして損害賠償を求めている。