“伴走者”としてプロジェクトを推進
「世界中の経験・知見が循環する社会の創造」をビジョンに、プロ人材の知見や経験をシェアし経営課題を解決するプロシェアリング事業を展開しているサーキュレーション。なかでも、業界のリーディングサービスといわれているのが「プロシェアリングコンサルティングサービス」だ。同社に登録している約2万人のプロ人材により、幅広いソリューションを提供できるとし、プロシェアリングコンサルタントが最適者を人選。そのプロ人材とともに課題解決に向けて伴走支援する。
社内に知見が足りない新規事業の推進に効果的で、プロシェアリングを成長戦略の重要なキーとして捉える企業が増えている。三井不動産もその一社で、2020年に立ち上がったビジネスイノベーション推進部は、オープンイノベーションの中核組織。設立当初から外部パートナーと協業するオープンイノベーションを重視した組織づくりがされており、サーキュレーションも立ち上げ当初から関わりをもつ。ビジネスイノベーション推進部に所属する可児盛明は次のように語る。
「ビジネスイノベーション推進事業部を立ち上げた私の上司が、サーキュレーションのウェビナー『ソノプロ』の視聴者だったのがそもそもの始まりと聞いています。その後、ウェビナーの出演依頼があったことから交流が生まれていったようです。今では、プロジェクトを共に進める伴走者のような関係性が生まれています」(可児)
三井不動産ビジネスイノベーション推進部 可児盛明
プロと検証した新規事業が、顧客課題に立ち返るキッカケに
2020年、商業領域で新たな購買体験を提供する事業構想があり、サーキュレーションに相談、0→1を得意とする立ち上げの相談役1名とテクニカルアドバイザー1名のプロ人材を入れ、約半年間検証を続けた。
結果、自社の強みを活かし切れないと判断、そのプロジェクトは一旦ペンディングになる。これが、顧客の課題解決にフォーカスする発想に立ち返るキッカケとなり、「NEWPOINT」という新プロジェクトがスタートすることになる。主導した可児は次のように語る。
「現在お客様のライフスタイルと価値観の多様化をとらえたD2Cブランドがリアルの場所でも求められています。弊社は『三井ショッピングパーク ららぽーと』や『三井アウトレットパーク』など、ブランドとお客様をつなぐリアルな場をもっていますが、企業体力がないブランドにとってテナントとして商業施設に入るのはハードルが高い状況です。そのような成長の可能性を秘めたD2Cブランドを全国から発掘し、お客様がそのブランドに共感して買いたくなるような、新たな価値と暮らしを提供する総合支援ができないかと考えました」
D2Cブランドに対して、ブランディングやマーケティング戦略の策定、店舗出店や購買体験の設計などを支援する、未来のブランドを共創するプロジェクトとして動き出したのだ。その際にジョインしたのが、サーキュレーションのプロ人材、森田浩行である。
「成長過程にあるD2Cブランドが気軽に出店できるWebとリアルが連動したプラットフォーム。それが、ブランドとエンドユーザーにどういうインパクトをもたらすかという実証実験のKPIの設計に関わったのが最初です。D2Cは自分の得意とする領域であり、もっている知見や経験を活用して貢献できると考えました」
サーキュレーション登録プロ人材 森田浩行
企業とプロ人材を慎重かつ的確にマッチング
約2万人のプロ人材のなかから、どのように森田は選出されたのか。その経緯について、サーキュレーションの中村春香はこう語る。
「森田さんはWebマーケティングに精通しており、Webとリアル両面で新規立ち上げの経験と知見がありました。また大手企業のアセットを活用し、デジタルを主軸にしたプロジェクトを得意としていたので、“大手企業で必要な意思決定プロセスを理解しつつITスタートアップのスピード感で推進する”という絶妙なバランス感覚を持っていると思い、ご相談をしました。新規事業の担当者は多忙な方ばかりなので、何人もプロ人材の候補を立てて、選考に時間を割いてもらうわけにはいきません。こちらで慎重に人選し、森田さんの意向を確認したうえで、可児さんに提案しました。」
少人数でプロジェクトを進めていた可児は、壁打ち相手としてだけでなく、実務もサポートできる人材を求めていた。
「理路整然とした話し方で、“事業の本質を伝える資料化”がうまく、行動も迅速。口だけではなく手を動かしてくださる方で、まさに私の右腕のような頼れる存在です。D2Cブランドへの価値提供という点では弊社に知見がない中で、森田さんの豊富な経験を活かして仮説検証に伴走いただきました。」(可児)
実証実験での検証項目の洗い出し、ホップアップイベントのオペレーション設計や、Webサイトの戦略設計まで幅広く関わり、森田はNEWPOINTの推進力として大きく貢献していく。
「その場、その場で答えを出していくスピード感を常に意識しています。関わり方は案件によってさまざまですが、今回のプロジェクトは週1、2回開催される定例会議のオンライン参加が中心。Slackなどを活用して会議前の準備や会議後の意見のすり合わせを都度行い、スピーディーに認識共有出来る体制作りを心がけました」(森田)
フェーズによって必要な人材は変わる
D2Cブランドに簡易出店の仕組みを提供し、2021年10月と22年2月に東京渋谷の「RAYARD MIYASHITA PARK South2F」で、3月には「東京ミッドタウン日比谷 アトリウム」でポップアップイベントを開催、回を重ねるごとに手応えを感じていると可児は語る。
「出店いただいたブランドの反応が良く、予想以上にニーズがあるというデータも取れています。今後もサービスをブラッシュアップしながら、リアルとWeb問わずブランドとお客様が出会える新しい商いの場づくりをしていきたいです」
森田も「人気の商業施設へ出店できる機会は勿論、独自マーケティングデータの取得等新しい価値を提供できていると感じます。エンドユーザーもモノを買う行為そのものではなく、ブランドの世界観や魅力を体験する、それも複数のブランド分を一度に楽しむ事ができ、双方(ブランドとエンドユーザー)のインタラクティブな場を生み出せる点にNEWPOINTの魅力と可能性があります」と、今後も予定されているポップアップイベントの準備に熱が入る。
NEWPOINTは順調に次のフェーズに進み、参画するブランドを増やすべく、現在は営業に特化したプロ人材も新たにジョインしている。その面談時には、森田も“採用する側”の立場で同席したというから面白い。
プロ人材との実践が企業の成長、人材育成に寄与
必要な時に必要な人材を活用できるのがプロシェアリングの魅力だが、中村はプロシェアリングが人材育成にも寄与すると説く。
「サーキュレーションのプロ人材は、惜しみなく経験・知見を提供することを前提として稼働されています。そうすることで、事業の推進スピードと成功確率が上がることを理解していて、成果が出た結果そのプロジェクトでは自分の役目が終了しても、築いた信頼関係や経験をもとに別の縁が繋がるなど、新たなチャンスが生まれることを理解しているからです。プロ人材が惜しみなく提供する経験・知見を吸収しながら、実践の場で経験を積むことができる。“プロ人材による伴走支援を受けながら実践の場で学ぶ”、これこそが企業が本当に必要とすべき「人材育成」の形だと思います。
契約は半年が主流というが、契約する側もされる側も、短い期間で成果が出ることがベストだ。プロ人材のキャリアや仕事に取り組む姿勢を含め、タッグを組む社員が吸収できる学びは多いといえる。
「一人のプロ人材がジョインして結果を出すことで、継続はもちろん、他の社員の方やグループ会社に広がることもあります。こうした好循環を増やしていくことで、人材不足の解消や人材育成にも貢献できればと考えています。」(中村)
サーキュレーション 中村春香
契約期間や内容、関わり方もフレキシブルに対応し、各企業の課題解決をサポートするサーキュレーション。設立からわずか8年で導入実績は3601社、1万937プロジェクト(2022年4月末現在)を数える。人材不足をはじめとする事業の課題解決やミッション達成における選択肢の一つとして、期待値も実績数もますます加速していきそうだ。
サーキュレーション
https://circu.co.jp
三井不動産 NEWPOINTプロジェクト
https://newpoint.info/
可児盛明(かに・もりあき)◎三井不動産ビジネスイノベーション推進部。2020年に入社し同部に所属。全社から幅広く事業アイデアを募集する事業提案制度「MAG!C(マジック)」の運営や、不動産とデジタルと掛け合わせた新規事業開発を推進。2021年から商業領域の事業を担当し、同年9月に「NEWPOINT」の実証実験を開始。
森田浩行(もりた・ひろゆき)◎サーキュレーション登録プロ人材。BASIC BASE代表。B to CのI T領域においてEコマースやWeb活用などの開発から実装までを一気通貫でサポート。事業会社での執行経験に基づく実現性の高いアウトプットにおける20年超の実績をもつ。2017年にフリーランスとして活動し、20年に合同会社BASIC BASE設立。
中村春香(なかむら・はるか)◎サーキュレーション プロシェアリング本部 エンタープライズ推進チーム エキスパート。コンサルチームのマネジャー職を経て、現在は大手企業対象のチームに所属。コンサルタントのエキスパート職として主にクライアントの新規事業の開発支援を担う。