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2022.07.18

AIはサプライチェーンの問題を解決する万能薬ではない それでも非常に役に立つ

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かつては業界用語だった「サプライチェーン」が、今や世界中の消費者が普通に口にする言葉になったのには、それなりの理由がある。粉ミルクからビール、半導体に至るまで、サプライチェーンが崩壊しているからだ。テクノロジーは、このような綻んで亀裂の入ったサプライチェーンを修復することができるのだろうか?

まあおそらく、ほんの少しは。多くのサプライチェーンのリーダーたちは、サプライチェーンの円滑化や強化のために技術投資が重要であることを認めているが、それらの投資に対する実質的なリターンはまだ得られていない。現時点では、テクノロジーがサプライチェーンにプラスの効果をもたらしていると実感している企業は、5社中1社に止まっている。

この結果はPwCが244人の経営者を対象に行った調査から得られたものだが、その調査の中ではサプライチェーン・オペレーションにおけるテクノロジー導入にばらつきがあることが判明した。調査によると、サプライチェーンの技術投資分野では、クラウドがトップ(25%が全面的に採用)、次いでIoT(モノのインターネット)開発(20%)、スキャンとインテリジェントデータキャプチャー(18%)となっていた。

人工知能もまた、可能性を秘めた技術投資の分野であり、初期の成果はこの技術に期待させるものだ。マッキンゼーの調査では、AIによるサプライチェーンマネジメントを導入した企業は、物流コストを15%、在庫レベルを35%、サービスレベルを65%改善することができたと算出されている。

繰り返すが、これは初期の成果であり、サプライチェーンにおけるAIの可能性は、より焦点を絞った高精度の出力結果にあるのかもしれない。「AIは魔法の弾丸ではありません。インフレやサプライチェーンの問題を解消することはできないのです」と、Aible(エイブル)の共同創業者であるジョナサン・レイは注意を促す。AIが、現時点でのサプライチェーンにおいて果たす最も生産的な役割は「最適なアクションに優先順位をつけ、さまざまなシナリオをテストして最善のアクション計画を立てること」だという。

企業は、可視性が欠如していたために、サプライチェーンで足元をすくわれることになった、とレイはいう。「サプライチェーンに携わる人なら誰もがブルウィップ効果(サプライチェーンにおいて、川下で起こった小さな需要変動が川上に伝播されるに従って大きな需要変動になる現象)のことを知っているでしょう。サプライチェーンが、すでに発生した過去の事象に反応することで管理されているために、このようなことが起こるのです」。一方、AIは、企業が未来を予測することを支援できる。「AIで最も成功しているサプライチェーンの企業は、この未来を見通す能力を使って、不足が起こる前に供給を強化するために最初に行動し、需要が低下する前に在庫の削減を開始しています」
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翻訳=酒匂寛

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