そのため平議員は「アジャイルが当たり前になってきたデジタルの世界で日本は負け続けているわけで、今回のホワイトペーパーもそうですが、ある程度意識がある人は。どんどんどんどん前倒し前倒しでスピードを上げていかないと追いついていけない」と話す。今回のホワイトペーパーが、異例とも言えるスピードで発表された理由がこれだ。
日本で何か新しいことを始める場合、「特区」を使った実証実験というのは定番だ。長田氏からはWeb3やメタバースで「特区といった形式で実験できるエリアなど」をプロジェクトチームで検討しているか平議員に質問をすると、答えは意外にも特区を重要視していないものだった。
Web3.0のポイント
平議員は「特区だと税金も係わってくるのでそれに関する法制化も必要。そうなると法務省が担当することになるが、法務省に任せると3年ぐらい時間が過ぎてしまう」と、ここでもやはりスピード感がネックになっているとのこと。
その上で「最も可能性があるのはDAO(分散型自律組織)です。例えば県や市町村の条例を制定して『DAO特区』というかたちでやっていくのはある。あとはクリプトビザなど、Web3界隈へ人材が入りやすいビザなど。法律を変える、運用解釈でできるか、は国家戦略特区・レギュラトリーサンドボックス・グレーゾーン解消制度でいくか。この3つの方法ぐらいしかやり方はない」と話している。
デジタル庁は1年でできた
日本がスピード感をもって進めていくためには、重要なポイントがもう1つあると平議員は指摘する。「総理のフルコミットがあるかないかということ。デジタル庁は1年でできた。普通は3年から5年はかかることで、なぜそれができたかというと、菅総理がフルコミットしたから。国家戦略特区も安倍総理がフルコミットした。総理がフルコミットすると3倍くらい速くなる」とのこと。
メタバースジャパン代表理事/一般社団法人渋谷未来デザイン理事・事務局長 長田新子氏
長田氏は、スタートアップなどでなにか新しいことをするときに、国に対してどういう風にアプローチしていいのかわからないという問題点を指摘。これについて平議員は「普通は役所に行くと思いますが、今までに受けたことのない相談だとわからないので、『やめておいたほうが良いですよ』と必ずいわれると思う。これは仕方のないこと」という。
そこで「ローメーカー(立法者)に行くのがいちばん直接的でいい。ローメーカーとは国会議員です。ただし国会議員でも自分の政策を作っている人は何割もいない。自分で政策を作っていない議員に言ったところで、役所を読んで任せるだけなので結局同じループです。自民党で言うと、デジタルやイノベーションで政策をちゃんとしている人は20人ぐらいしかいない。そこにアクセスするのがいちばんいいと思う」と説明する。
ただし「国会議員もなかなか忙しくアクセスも難しい。そういうときに、メタバースジャパンのようなところが間に入って、まとめて持ってくるというのは非常にいいと思う。あまり時間差を置かずに、提言をまとめて持ってきて貰えれば」と業界団体設立には意義があることも話していた。