ゼロ・データセンターに舵を切ったFedExと、クラウド業界の今後

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ビジネスの世界では今、各社がこぞってクラウドへの全面移行を進めているが、クラウド関連株の投資家にとっては、これには良い面と悪い面の両方がある。

物流大手フェデックスの幹部は6月29日、同社が保有するすべてのデータセンターを閉鎖し、パブリッククラウドに完全移行する計画を明らかにした。この移行で、1年あたり4億ドルのコスト削減が見込めるという。

各社はすでに10年以上前から、クラウドベースのコンピューティングやデータストレージへの移行を始めていた。だが、最近の動きがこれまでと違うのは、最も規模の大きな企業が、自営のデータセンターや、他社から借りているコロケーションスペースを廃止し、パブリッククラウドを選んでいることだ。

こうした移行は、アマゾンやマイクロソフト、アルファベット(グーグル親会社)のような企業にとっては願ってもないチャンスと言える。パブリッククラウド市場で最大のシェアを持つこのテック系大手3社は、さらに大きな利益を手にすることになるだろう。

端的に言えば、クラウド導入の利点としては、規模拡大の容易さ、コスト効率の向上、柔軟性に欠けるモノリシックアプリケーションの撤廃が挙げられる。

そしてそれこそ、フェデックスのロバート・カーター(Robert Carter)最高情報責任者(CIO)が29日に伝えたメッセージだった。カーターは、この日行われた年に1度の投資家向けイベントでアナリストらに対し、テネシー州メンフィスに本社を置く同社が、早急にゼロ・データセンター、ゼロ・メインフレームへと移行すると明らかにした。

この移行により、ハードウェアのアップグレードサイクルと人件費の大幅な削減が可能となり、なおかつ、アプリケーション構築のスピードアップにも役立つ見込みだという。

データセンター情報サイトのバクステル(Baxtel)によると、フェデックスが現在運営しているデータセンターは、コロラド州コロラドスプリングスにある単一の施設のみだという。2008年に竣工されたこのセンターは、さらにその3年後に2万6000平方フィート(約2415平方メートル)の増床を行っていた。
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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