200億ドルの移管は今月行う予定。これによりゲイツとメリンダの生涯寄付額は合計で550億ドル(約7兆6300億円)に膨らみ、米著名投資家ウォーレン・バフェットの480億ドル(約6兆6600億円)を抜いて史上最高になる見通しだ。バフェットも寄付の大半を、昨年まで理事を務めていたゲイツ財団に提供している。
世界最大の慈善団体であるゲイツ財団は新たな寄付を受けて、現在年間60億ドル(約8300億円)の資金拠出額を2026年までに1.5倍の90億ドル(約1兆2500億円)に引き上げる方針。ゲイツによると、新たな資金は「いまやっている活動を基本的にすべて加速させる」ものになるという。
今回の巨額寄付には、ゲイツ財団によるジェンダー平等や疾病根絶、乳幼児死亡率の低下といった課題への資金拠出が年30億ドル増えること以上の意味がある。これは世界でもっとも裕福な人々に向けて、何世紀にもわたって自分の名で少しずつ援助が続けられるように基金を積み上げるのではなく、生きている間にもっと積極的に慈善活動をやる必要があるのではないかと訴えるものでもあるからだ。
「自分の財団をできるだけ長く存続させようとしている人もいるようだが、いまやれる、インパクトの大きいことがあるのではないか」(ゲイツ)
ゲイツによる新たな寄付は、免税店デューティー・フリー・ショッパーズの創業者、チャック・フィーニー(91)らが体現する「生きている間に与える」という考え方に倣うものでもある。かつてフォーブスの米国長者番付「フォーブス400」に名を連ねていたフィーニーは、これまでに80億ドル(約1兆1100億円)あまりを寄付し、無一文に近い状態まで保有資産を減らしている。
ゲイツもまた、存命中にフォーブスの世界長者番付から外れたい意向だ。「この規模の寄付をさらに2回くらいやって、番付の目立つ場所から消えるつもりだ。わたしの場合、番付から完全に外れるにはしばらく時間がかかりそうだが、進むべき方向ははっきりしている」(ゲイツ)
今回の寄付によってゲイツは番付の順位を1つ落とし、5位に後退した。財団を除く純資産額は推定で約1020億ドル(約14兆2000億円)。
メリンダとの関係については、ゲイツは「離婚というたいへんな時期にも、財団では建設的に協力できた」と振り返り、「財団のことではメリンダととても意見が合い、いつも驚かされてきた」と話した。