「景気のモメンタム(勢い)が弱まっている」──。バンク・オブ・アメリカのマイケル・ゲーペン率いるエコノミストチームは13日の顧客向けリポートでそう指摘し、米景気は今年「緩やかなリセッション」に入ると予想した。2022年第4四半期(10〜12月)の実質国内総生産(GDP)が年率換算で前期比1.4%減(前年同期は6.9%増)に沈み、以前の予想よりも急激に成長が減速するとした。2023年通年は1%増を見込む。
リポートでは、サービス部門の消費支出が「おそらくもっとも懸念される」材料になっていると言及した。米個人消費支出(PCE)は5月に実質ベースで今年初めて減少。ウォルマートやターゲットといった小売り大手は、警戒感を強める米消費者の間で娯楽品の購入を手控え、必需品や安価な製品に支出を回す動きがみられると報告している。
ゲーペンらは消費支出の勢いが鈍った理由について、少なくとも一部は「インフレ税」によるものだと説明した。食品やエネルギーが数十年ぶりの高値になっている最近の消費者物価高を指す言葉だ。13日午前に発表された6月のCPIが前月比9.1%上昇と予想を上回ったことにも触れ、インフレ税が消費支出の重荷となり、米経済を今年リセッションに向かわせるという見方をさらに強める根拠になったとした。
ゲーペンらは従来の見方を変更した別の理由として、FRBが物価の安定化に向けた取り組みを強化する姿勢を示し、その過程で多少の痛みが生じるのもやむを得ないとしていることも挙げた。ジェローム・パウエルFRB議長が、リセッションを避けながら物価を安定化させるのは「至難の業」と認めている点にも言及した。
米銀大手でもゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどは、米経済は年内のリセッション入りを回避できそうだとの見方を変えていない。一方、野村は今月、中央銀行がインフレ対策で「非常に積極的」になるなかで米国や英国、韓国を含む多くの主要経済国が向こう1年以内にリセッションに陥ると予想している。