梅雨明けは7月半ばくらいというのがこれまでの実感だったが、今年は早くから容赦なく夏の太陽が照らし続けている。暑さは厳しく、熱中症に注意せよという呼びかけもメディアを中心にしきりに拡声されていた。
この長く続く猛暑とすでに習慣ともなったマスク着用、そして例年になく早い梅雨明けで、今年の夏はいつもより過ごすのには煩わしいものとなりそうだ。こんなときこそ、笑いや驚きとともに、この難儀な日常を忘れるというのもいいかもしれない。
ということで、本コラムも少し趣向を変えて、この夏の暑さを乗り切るのにうってつけの新作映画について紹介してみたい。ちょうどそれにふさわしい3作品が公開となる。
200倍近い製作費の「キャメ止め」
まず、日本原作のメイド・イン・フランス作品「キャメラを止めるな!」。いうまでもなく、まだ「コロナ」の「コ」の字もなかった4年前の夏、製作費300万円の作品が最終興行収入31億円超のヒットに大化けした「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)のリメイクだ。
(C)2021 - GETAWAY FILMS - LA CLASSE AMERICAINE - SK GLOBAL ENTERTAINMENT - FRANCE 2 CINÉMA - GAGA CORPORATION
元の作品は、本コラムでも「映画界のシンデレラストーリー」として紹介したが、2018年6月にたった2館で公開がスタートしたインディーズ作品が、最終的には353館へと上映拡大、観客222万人を動員して、この年の興行収入ランキングでも第7位に入った。
まさに2018年の夏を彩り、「カメ止め」の愛称とともに社会現象ともなった作品だが、日本のみならず海外でも30近い映画祭で上映され、さまざまな映画賞も受賞している。
構成は、前半の37分で描かれるゾンビ映画の舞台裏を、中盤から後半にかけて次々に明かしていくというもの。その鮮やかな伏線の回収が胸にストンと落ち、爽快感さえ感じさせる仕掛けが施されていた。
このユニークな構成が評価されて、海外からのリメイクのオファーも多かったそうだが、めでたく実現に至ったのが、このフランス映画「キャメラを止めるな!」だ。
監督はなんと「アーティスト」で2012年の第84回アカデミー賞で監督賞と作品賞(他にも主演男優賞他、全5部門で受賞)に輝いたミシェル・アザナヴィシウス。まさにオスカー監督が「カメ止め」のリメイクを手掛けるという驚きの展開だった。
日本の「カメ止め」は製作費がたった300万円だったのに対して、仏版「キャメ止め」は400万ユーロ(約5億5000万円)と、200倍近い製作費が費やされており、撮影のセットもかなり大がかりなものとなっている。
内容については、ほぼ日本版のストーリーを「骨格」としているが、フランス版独自のセリフも多数入っており、よりコメディの要素が増している。
また、大枠の物語として「日本からの依頼で大ヒット作品をフランスでリメイクする」という新たな設定もあり、「登場人物の名前を日本人の名前に」などと、無理難題が突きつけられるドタバタ劇も付け加えられている。
『キャメラを止めるな!』7月15日(金)、全国公開 /(C)2021 - GETAWAY FILMS - LA CLASSE AMERICAINE - SK GLOBAL ENTERTAINMENT - FRANCE 2 CINÉMA - GAGA CORPORATION