米PE(プライベート・エクイティ)ファンドのベインキャピタルは、ヘイが20年8月に行ったシリーズEラウンドで総額約70億円のマイノリティ投資を実施。日本のスタートアップへは初の投資案件となる。同社マネージングディレクターの西直史はなぜ投資したのか。
西:PEファンドは、基本的に成熟した企業へマジョリティ投資を行いますが、数年前から将来性のあるテクノロジー分野では、成熟する前の会社にも投資していく方針を立てて、50億円ほどの規模感でマイノリティ投資ができるレイトステージのスタートアップを探していたんです。そんななか20年の春に、ヘイさんからシリーズEの調達額をさらに増やしたいと相談をいただいた。
佐藤:もともとシリーズEの調達に向けた活動は19年末までにある程度終えていたんです。コロナ禍になると市場全体が停滞するとみて、お金を使って急成長するよりも、体制を固めて黒字化を優先するつもりでいました。
でも、最初の緊急事態宣言の影響が見えてきたタイミングで、中小規模の事業者さんを支援する立場にある僕らのような会社が、自分たちだけ黒字を確保してその場を切り抜けるのは、本当にやるべきなのかと思うようになった。それで調達額を増やし、クービックの統合も含めて大きなトライをしようと。
西:足元のかじ取りに手いっぱいなスタートアップの経営者もいますが、佐藤さんはビジョナリーで5年、10年先を見据えていると思いました。例えば、当時、コロナ禍でネットショップ開設は増えている一方、決済サービスはリアル店舗での取引が減っているうえに競合が多く、難しいともとらえられた。でも佐藤さんは、長い目で見たときに、ヘイが両方のサービスをもち、中小事業者のデジタル化を全体で支援できることに価値があると考えていた。
佐藤:この先、飲食店や小売店、マッサージ店などがオンラインとオフラインの販路を両方もつことが当たり前になっていきますが、小規模だったり、ITリテラシーが高くなかったりするお店が、大企業のように自前で必要なシステムをいくつも構築するのは難しい。彼らにはデジタル化を支える人が必要で、それを僕たちがやるべきだというのが基本的な考え方です。実績が積み上がってきて、ようやく多くの方に理解してもらえるようになってきました。
それでも当時はリスクオフするのが普通の状況でしたから調達難易度は高いと思っていました。成長とM&Aの資金確保に加え、既存株主の皆さんに出口機会を提供する必要もあり、引き受けていただける投資家はなかなかいないだろうと。