メンター制度、事業成長の原動力に

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難しいことを学ぶときは、あなただったらどうするだろうか?例えば地雷原を歩く方法について、本を読んだり、セミナーを受講したり、eラーニング講座をダウンロードしたりするだろうか?

もちろん、そんなことはしないだろう。その代わりに、人類が遠い昔から行ってきた方法を取る方が良い。地雷原の歩き方に精通したメンター(助言者)を見つけるのだ。

事業を成長させるプロセスは、地雷原を抜けるのに似ているかもしれない。ビジネスリーダーや起業家は、自分にとって理想的なクライアントや従業員を確保し、厳しい競争の中で優秀な人材を維持し、困難な時期でも高い業績を上げるよう促さなければならない。これは、試行錯誤しながら学ぶべきものではない。

答えはトレーニングとコーチングにあると考える人もいる。だが、企業幹部や起業家向けコンサルタント会社メンターズ・オン・ミッションの創業者で、30年以上にわたり多数の人々のメンターを務めてきたエリック・ロゲルいわく、「リーダー向けトレーニングやコーチングは現代の流行りとなっているが、古くからの慣習であるメンタリングはそれを上回る効果を上げる」という。

ロゲルは、メンタリングによって、ビジネスリーダーやソロプレナー(個人起業家)が直面する2つの大きな課題を解決できると語る。

優秀な人材の獲得と維持


「私たちは、グレート・レジグネーション(大量離職時代)から、今の従業員が求めているのは給与だけではないことを学んだ」とロゲルは言う。「従業員が一番に望むのは、職業上、そして個人としての成長・発展の機会だ。この面では、リーダー向けトレーニングやコーチングよりもメンタリングの方が優れている」

ロゲルによると、メンタリングプログラム支援サービスを提供するメンタークリック(MentorcliQ)の調査では、プログラムに参加した従業員の定着率は50%上昇するとの結果が出ている。

エンゲージメント、能力開発、生産性


ギャラップの調査では、仕事に対するエンゲージメントがある労働者はわずか16%で、年間3000億ドル(約40兆円)以上の生産性が失われている計算になることが示されたという。

「メンターは、教科書やトレーニングマニュアルからは決して学べない“現実世界の知恵”を授けてくれる。実体験や苦労の経験を継承し、メンティー(指導を受ける人)がその経験を吸収して身に付け、質問をして深掘りすることを促す。トレーニングが終わっても長期にわたり成長が続く」(ロゲル)
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編集=遠藤宗生

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