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2022.07.27

スタートアップがダウンラウンドを避ける5つの手法


有料課金ユーザーに前払いで請求する


このような厳しい時代においては、キャッシュが命です。強固なバランスシートが何よりも重要になります。ビジネスモデルにもよりますが、提供するサービスに対して前払いで請求することも1つの手段になるでしょう。例えばSaaS企業であれば、ディスカウントをつけるなどして、1年もしくは数年単位の契約に設定することができるかもしれません。実際、1999年に設立されたSalesforceは、ベンチャーキャピタルから資金調達をしたことがないことで有名です。代わりに個人投資家からの出資や、顧客からの「出資」だけで成長してきました。キャッシュが厳しい局面では、サービス利用料を前払いで請求することでカバーしたそうです。

ここまで説明しましたが、ダウンラウンドを回避する1番の方法はいうまでもなく、シンプルに健全な成長を実現することです。以前も書きましたが、エコシステムの中でトップレベルのスタートアップは、条件こそ過去1~2年とは異なるかもしれませんが、どのような環境であっても資金調達できるでしょう。最終的には「財務的に健全な成長」が、「いかなる代償を払ってでも達成する成長」に勝るのです。また、投資家がスタートアップの評価に使う指標についても、今後は「40%ルール」やバーンマルチプル、マジックナンバーなどの健全性指標がより重視されるようになるでしょう。プロダクト・マーケット・フィットをまだ達成していないスタートアップであれば、コストを削減し、達成できるまでの時間を稼ぐ必要があります。先行きが不透明であるにも関わらず、どうしても資金調達しなければならない場合、上に述べたような方法が役に立つかもしれません。

最後に、ポジティブな視点で締めくくりたいと思います。Facebookを見ればわかるように、ダウンラウンドは必ずしも失敗ではありません。そしてSalesforceを見ればわかるように、VCから調達できなかったからといって、企業として成功しないわけではありません。度胸や集中力、スピード、野心を備えた卓越した経営チームであれば、厳しい経済状況であってもきっと耐え抜き、結果的により強固に成長できるはずです。そんなチームを、私たちは応援しています。

連載:VCのインサイト
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文=James Riney

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