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2022.07.27

スタートアップがダウンラウンドを避ける5つの手法


借入れによる資金調達


ここ数年で進んだポジティブな変化の1つが、より多くの金融機関がスタートアップに向けたデット・ファイナンスに意欲的になってきていることです。例えば日本政策金融公庫や商工中金、大和ブルー、みずほ銀行、あおぞら銀行、新生銀行などがそうです。十分な売上を出せているスタートアップであれば、ダウンラウンドのリスクを取るよりも、借入れを活用して先延ばしするほうが選択肢としてずっと魅力的かもしれません。

J-KISSを活用したキャップなし・大幅ディスカウントのブリッジファイナンス


J-KISSの使い方の1つが、複雑な条件の交渉やバリュエーションの決定をすることなくブリッジファイナンスを活用できることです。J-KISSには「キャップ」が設定されていますが、これは企業がプライスドラウンド(バリュエーションがついた株式による資金調達)を行うタイミングで投資家に適用されるバリュエーションの上限額として本来は機能するはずのものです。しかし、コンバーティブルエクイティにおけるキャップは実際のところ、バリュエーションを決める際の基準値として扱われるため、キャップより低いバリュエーションは「ダウンラウンド」とみなされてしまうという問題があります。

これを解決する手段として、契約条件からキャップを取り除き、代わりに魅力的なディスカウントをつけるという方法があります。J-KISSのテンプレートでは、20%のディスカウントが設定されています。しかし、これを30%や50%以上などに上げてもいいわけです。つまり、キャップなしでブリッジファイナンスを提供する代わりに、投資家は次のラウンドで大幅なディスカウントがついたバリュエーションで株式に変換できるということです。

ただし、キャップのない金融商品は投資家から避けられる傾向が強いという点には注意しなければなりません。自分たちの企業のことをすでによく知ってくれている既存投資家のほうが、前向きに検討してくれる可能性が高いでしょう。新規投資家に提案する前に、既存投資家たちの反応を探ってみることをおすすめします。

ダウンサイド・プロテクションを提供する


市場のセンチメントが悪化すると、起業家に有利な時代には考えもしなかった「ダウンサイド・プロテクション」に対する需要も盛り返します 。経営チームの考えとしてどうしてもダウンラウンド避けたり、アップラウンドを実現したい場合、譲歩として投資家側のリスクを抑えるような条件を入れることも必要かもしれません。

例えば、希薄化防止条項や、倍率2x以上の残余財産分配優先権、ドラッグ・アロング・ライトなどの条件です。これらの条件をのめば、より高いバリュエーションで調達できるかもしれません。しかしその一方で、将来的なラウンドに対して前例を作ってしまうという点に注意が必要です。次回以降のラウンドでも投資家から同じ条件を求められるかもしれず、パンドラの箱を開けてしまうような結果になりかねません。このような理由から、ベンチャーキャピタリストのBrad Feld氏も、複雑な条件にするよりもシンプルにダウンラウンドを受け入れたほうがいいと勧めています
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文=James Riney

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