iPadを授業に利用する熊本市の小中学校では「自ら課題解決」する生徒が育っている

熊本市の小中学校ではGIGAスクール構想よりも早くiPadを授業に導入した

熊本市立藤園(とうえん)中学校2年生の理科の授業では、植物について学んでいた。生徒は1人1台iPadを手にしている。教壇に立つのは池⽥優平教諭だ。



授業ではARアプリを利用する。モニターには、何もないはずの空間に大きなヒマワリが現れていた。池田教諭はそのヒマワリの部分を指して「ここの部分をなんといいますか?」と質問すると生徒たちは「道管! 師管!」と答える。

ARでの観察を終えると、生徒たちはプレゼンテーションを作成する。中学生たちは、スムーズにまとめていく。しかも植物が水を吸い上げる様子をアニメーションにしている。授業の最後には3、4人のグループになって、作り上げたプレゼンテーションを披露し、良かったところを述べあった。

「わかったことをiPadを使ってまとめるので頭に入りやすいし、授業も楽しい。テストも、作ったKeynoteのことを思い出しながら解いていくこともあります」と生徒たちはいう。



iPadを使った授業は、紙の教科書やノートを使った場合とどう違うのか。「電子黒板を使ってノートを共有できるのは大きな違いです。導入後の方が生徒が活発的になり、自分で考えながらやれるようになったように思います。『思考力』が上がったようにも感じます」と池田教諭はいう。

伝えることで学びが深まる


熊本市立楡木小学校の5年生は、国語の授業でiPadを使っている。授業では謙譲語や尊敬語などの種類を覚えるために、児童は3、4人のグループに分かれてオリジナル動画を作る。テレビなどの撮影のように進行役は、用意した文章をiPadに表示させていわゆる「カンペ」のように出演する生徒に見せる。これらの文章は、iPadに接続した外付けのキーボードで入力したものだ。これらは1人1台渡されているもので、生徒たちは朝の自習時間にタイピングの練習をしているという。



児童たちがつくるオリジナル動画のプロットは、さまざまでユニークなものだ。シンキングタイムがあることで盛り上がる⚪︎×クイズや校長室を訪問するといった「ロケ」を行うグループもあった。身近な目上の人である校長先生に出演してもらうことで、謙譲語や尊敬語などの使い方をリアルに撮影できる。

児童たちは全員、iPadを触りながら授業は進む。倉﨑教諭はその様子を丁寧に観察し、細やかにアドバイスをしていたのも印象的だった。



そして発表が行われる。児童たちは手をあげ、それぞれの動画に対して「クイズにしていたのがおもしろかった」など良かったポイントを述べあう。

この「作る」「発表する」「フィードバックをもらう」という流れは、大人が仕事のプレゼンなどで行うものと同じものだろう。iPadがあればそれもスムーズに行うことができる。

GIGAスクール構想以前から始まった熊本市の取り組み


藤園中学校や楡木小学校がある熊本市は、クリエイティブな学びのためにはiPadが必要だと考え、導入している。その決定は実を結んでおり、さまざまな教育機関が視察に訪れ、参考にしている。
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編集=安井克至

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