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2022.07.12

テスラの強敵に浮上した中国BYDとNIO、高価格モデルも強化中

Getty Images

イーロン・マスク率いるテスラは、急拡大する中国市場の需要と利益を背景に、2022年初めにはEV業界で圧倒的なリーダーの座に君臨していた。しかし、中国のBYDがプラグイン・ハイブリッド車を含む上期の販売台数でテスラを上回り、同社を脅かす存在として台頭してきた。

深圳に本拠を置くBYDの株主には、ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイが長年名を連ねている。BYDのEVとプラグイン・ハイブリッド車を合わせた上期の販売台数は、前年同期比315%増の64万1350台だった。これに対し、テスラは同46%増の56万4743台だった。

EVに限定すると、テスラがBYDを上回った(6月にBYDが販売した新エネルギー車13万3036台のうち、6万4218台はプラグイン・ハイブリッド車だった)。しかし、BYDをはじめ、XPengやNIOなど、急成長中の中国企業は、テスラと競合するハイエンドモデルの増産を特に強化しており、テスラとの差は縮小している。

BYDは7月3日、ツイッターで、「2022年上期の販売台数が64万台を超えた」と述べた。新型コロナウイルス対策のロックダウンによって、テスラの上海工場が4〜5月に大きな打撃を受けたのに対し、BYDが受けた影響は限定的だったようだ。

中国市場の巨大さを考えると、同国のEVメーカーの急成長は驚きに値しない。中国では、プラグイン・ハイブリッド車を含めたEVの販売台数が2021年に330万台を突破し、米国の60万8000台を大きく上回った。その要因としては、政府による積極的な支援策に加え、販売価格が約3万2800ドルのBYDのセダン「漢(Han)」のような小型で低価格のモデルが充実していることが挙げられる。

一方、米国では、高い価格がEV普及の障害となっている。Kelley Blue Bookによると、米国ではバッテリー駆動モデルの平均価格が6万4000ドル以上となっており、テスラの優位性を反映した結果となっている。

ドイツ銀行の株式アナリスト、Edison Yuは、次のように述べている。「中国のEVスタートアップは、国内のプレミアムセグメントや海外市場をターゲットとした協調的な取組みを行っている。マス市場向けでは、Leap MotorやHozon Neta、WM Motor、BYD、さらには既存メーカーのサブブランドであるGAC/AionやBAIC/Arcfox、SAIC/R-brandなどによる競争が激化している。新規参入企業は、利益を犠牲にしてでも、短期間で市場シェアを拡大することに努めている」

NIOも、BYDのようにテスラに触発された中国企業の1つだ。同社は、先月リリースしたSUV「ES7」などによって今年は着実に売上を伸ばしている。ES7の販売価格は、6万9000ドルからとなっている。同社は今月、上期のEV販売台数が14%増の2万5059台に達したと発表した。

テスラは、上海とベルリンのギガファクトリーで再び生産ペースが減速しているものの、アナリストらは、同社がドイツとテキサスに新設した工場の効果により、2022年後半には生産ペースが向上すると予測している。

テスラは、2021年にセダンのモデル3とモデルS、SUVのモデルYとモデルXを93万6027台販売し、EV販売台数で首位となった。同社の後には、中国のSAIC(上海汽車)が60万9730台、フォルクスワーゲンが45万1131台で続いた。BYDは、32万3143台で4位、起亜自動車を含む現代自動車グループは、21万6562台で5位だった。
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編集=上田裕資

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