目標台数を上回る勢い。日産初の軽EV「サクラ」が好調な理由

発売後人気急上昇の日産「SAKURA」

日産が世界初のEV「リーフ」という量産車を登場させたのは、2010年だった。にもかかわらず、それから12年はブランクに。しかし、2022年に入ると、半年だけでなんと2台の電気自動車を投入した。その1台は好評のSUVのアリア、そしてもう1台は軽EVの「サクラ」。今回は、日産の初の軽EVで、しかも同社で初めてとなる日本名を採用したサクラをチェックしよう。

5月の発表から3週間で受注は11000台を突破した。この数字は「月販目標台数をはるかに超えている」と日産側は語る。今年に入ってすでに他のカーメーカーから10台以上の新型100%電気自動車が登場している中、充電状況がまだ完全ではないにしても、サクラの受注台数をみると、ついにEVを所有してみようという時代になってきたのではないかとうかがえる。

横から見たSAKURA

電動化を進めるルノー日産三菱アライアンスの中の日産にとって、サクラは重要なモデルだ。同車の姉妹車である「三菱eKクロスEV」がガソリン車と連続性のあるデザインなのに対し、日産は軽カー「デイズ」を未来的に一新。サクラには、今までのVモーションのグリルとは違って、サクラには縦に伸ばした「アリア」のようなフロントマスクを採用した。外観は従来のハイトワゴンと特に変わるところはない。「水引」をモチーフとしたアルミホイールはとてもスタイリッシュ。充電ソケットのフタについている水引のアイコンも可愛いタッチだ。

開発者と話をしたのだが、彼らはその出来栄えに自信満々。一番驚いたコメントは、「実はここ25年間、新車を作り続けてきましたが、サクラは一番文句というか苦情を言われない車両なんです。言い換えれば、一番ほめられるクルマだと言えます(笑)」という。つまり、市場は同車にかなり期待しているということだね。

「上質なプライベート空間」を目指したというインテリアはワンクラス上の質感になっている。フロア下に上手にバッテリーパックを収めているので、フロアがフラットでどの年代でも意外に使いやすい。コンソールまわりのカラーリングがピアノブラックというタッチも納得できる。エアコンの操作パネルはすべてタッチスイッチ式になっているけど、グラフィックスは綺麗だし、使い方も楽ちん。

ダッシュボードの写真

ダッシュボードにはファブリックがふんだんに使われているだけでなく、ソファを意識したシートの表面には緩やかなカーブが施されている。後部席の座面の前後スライドは左右一体式だが、リクライニングは左右個別にできる。助手席前方のダッシュボードには大きなくぼみがついている。小物置きスペースとして使えるとともに、室内の開放感アップにも貢献している。ダッシュボード下部には引き出し式のカップホルダーが用意される。その手前には、桜の模様が刻まれている。

パワーユニットは、容量20kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーが床下に採用される。フロントアクスルに搭載される駆動用モーターは、最高出力64psと最大トルク195Nmを発生。軽のターボ車より倍ほどの加速を持ち、最高速は130km/hと公表されている。シフトセレクターのサイドにある「e-Pedal」ボタンを押すとワンペダルドライブの「e-Pedalステップ」が使える。アクセルを緩めた時の減速度・回生ブレーキは自然で、違和感なく使える。しかし、アクセルを使って減速する走行は慣れが必要だ。低重心だから、コーナーに入った時にボディロールはほとんど無く、意外とキビキビした走りに笑顔がわいてくる。

坂道を走るSAKURA
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文=ピーター ライオン

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