キャリア・教育

2022.07.12 08:00

従業員エンゲージメント調査に最適なのは、業務量が落ち着く夏

Photo by Lumina Images / Getty Images

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従業員エンゲージメントの調査は、それを実施する企業で働く人たちのモチベーションの源を突き止め、より迅速に意欲を高めることが狙いだ。それに異存はない。ただし、注意すべきポイントがある。「自社従業員のモチベーションの源を解明するのに最も適した時期は夏であることが多い」ことだ。

一般的にいえば、夏季に従業員エンゲージメント調査を実施する企業は少ない。休暇をとっている従業員が多いし、取引もスローダウンするからだ。しかし、夏特有の状況はそれだけではない。急を要する業務上の問題が発生することが減るので、従業員のモチベーションを、より確実かつ正確にうかがい知ることが可能なのだ。

想像してみてほしい。秋に入ると顧客から大量注文が入り、とたんに目が回るような忙しさになる。会社としてはありがたいが、その一方で、従業員は不満を募らせ、疲れ切ってしまう可能性が高い。そうした状況下で従業員エンゲージメントの調査を実施した場合、従業員の心の底にあるモチベーションを解明できると思うだろうか。それとも、その特殊な多忙さに伴った不満が浮かび上がってくると思うだろうか。

想像に難くないだろうが、多忙さが引き金となった従業員の不満が見えてくる可能性は高い。もちろん、従業員がどのような不満を抱えているのかを把握することも重要だ。しかし、外部からの影響を受けて生じた一時的な不満はおそらく、従業員が心の底に抱えている問題を覆い隠してしまうだろう。従業員エンゲージメントを高めて持続的な変化を起こしたければ、従業員が心の底で何を考えているのかを理解する必要がある。

筆者が創業したコンサルティング企業リーダーシップIQのオンライン調査「How Good Is Your Employee Engagement Survey?(従業員エンゲージメント調査はどのくらい正確か)」では、従業員エンゲージメント調査で実際に好ましい結果(スコアが上った、など)が得られた企業は22%にすぎないことがわかっている。

調査を実施しても、従業員エンゲージメントが改善されたことを示す結果が得られないのはなぜだろうか。その理由のひとつは、一度限りか、一時的な職場の状況に大きく影響を受けた従業員の回答を見ているからだ。

仮に、従業員がある日、出勤途中で車の接触事故を起こしたとしよう。その場合は、1週間とまでは言わないが、少なくとも事故当日は、極度に否定的な考え方をするようになってしまうかもしれない。それは当然だし、気持ちも理解できる。では、その事故が、従業員エンゲージメント調査当日の朝に起きたとしたらどうだろうか。目が回りそうなくらい忙しい時期に調査を行った場合も、状況はそれと同じだ。

企業では、夏になるとペースダウンして業務量が減ることが多い。そんなときこそチャンスだ。そのタイミングで、会社の価値観や上司の指導力、業務管理プロセスの有効性、経営幹部の透明性などについて、従業員の考えを尋ねて評価したい。

たとえば、リーダーシップIQが実施した調査では、上司が従業員の成長と能力の最大化を促進するうえでどれくらい積極的な役割を果たしているのかが、従業員の意欲を高める大きな要因になりうることがわかっている。同様に、上司が従業員に、企業の価値観に対してどれだけ責任を持てるようにしているかが、従業員エンゲージメントを予測する重要な予測因子になることもある。こうした例は、数えるときりがない。

残念ながら、業務量が異常に増える時期など、いつになくストレスが高まる時期には、こうした問題のどれが、自社の従業員にとって最も重要なのかを評価しにくいのだ。

もちろん、従業員エンゲージメントをまったく測定しないくらいであれば、多忙な時期であっても、従業員エンゲージメント調査を行って測定するほうがまだマシだ。ただし、従業員エンゲージメントをより正確に測定できるのは、業務がスローダウンして少し落ち着いている夏の時期であることを忘れないでほしい。

夏のうちに従業員エンゲージメントを測定することによって、従業員の不満を和らげるための方策をとり始めることができる。そうすれば、秋に入って業務が否応なしに忙しくなったときに、問題が減少するかもしれない。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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