まるで偽装請負? アマゾンの「多重下請け」構造、宅配業界の闇

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多重下請け構造による賃金の低さは運送業界にとって、古くからの問題だ。多くのドライバーが不満を持っているにもかかわらず、この問題は長い間放置されてきた。

それに加えて通販市場がこれまでにないほど伸びている。報酬は下げ止まり。荷量の増加で負担ばかりが増える一方。それだけではない。昨今のガソリン代の高騰により元請けの運送会社の経営が逼迫し、業務委託の報酬をさらに下げる動きも一部では見られるようだ。委託契約を更新しない選択をとるドライバーもいる。


「アマゾン配達員組合」結成の動き


最近Amazonで注文した商品が、時間通りに届かない経験をした人もいるのではないだろうか。単なる配送の質における問題ではなく、本格的にドライバーが不足してきた兆候だと筆者は考えている。このままでは更なる配送品質の低下、遅延は免れないだろう。

2022年6月。「東京ユニオン」と「アマゾンデリバリープロバイダー」で働くドライバー10人が「アマゾン配達員組合横須賀支部」を結成し、長時間労働の是正や荷量の適正化を訴えた。

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ここで訴えを受けたアマゾンデリバリープロバイダーの仕組みは多重下請け構造の象徴ともいえる。ケースによって異なるが、構造はおおむね以下の通りだ。下にいくほど立場は弱くなり、不満の声を挙げられず静かに業界を離脱するドライバーもいる中で、今回は組合として立ち上がったものである。

荷主ーAmazon


1次下請けー大手運送会社


2次下請けー中小運送会社


3次下請けー個人事業主

Amazonはこの仕組みを作り上げたことで、自社の配送網を拡大した。それでもまかないきれない配送については、Amazonと個人事業主が直接契約を結ぶ「アマゾンフレックス」に委託される。

「アマゾンデリバリプロバイダー」と「アマゾンフレックス」。契約方法によってドライバーの働き方は異なる。
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文=田中なお 編集=石井節子

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