経済・社会

2022.07.09 06:00

米国の中絶禁止、若者の「選挙離れ」加速させる可能性も

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米民主党の政治資金の調達を担う各団体は、連邦最高裁が人工妊娠中絶の合憲性を認めた「ロー対ウェイド判決」を覆す判断を示した直後、発表した共同声明で、「11月の中間選挙の重要性は、これまでにないほど高まった」と訴えた。

民主党の全国委員会(DNC)、上院選挙キャンペーン委員会(DSCC)、知事会(DGA)などのリーダーたちは、「2022年の選挙は女性や家族に対して新たな、残酷な、罰を与えるような規則を課すかどうかを決定するものとなる」と主張している。

そして、DGAは7月5日、中絶の権利に多大な影響力を及ぼす可能性がある各州に、自党の知事を送り込むための基金を創設した。最高裁の新たな判断を、中間選挙の投票率の上昇につなげようとする民主党の取り組みの一環だ。

1000万ドル(約14億円)の調達が目標だというこの基金が、再選を目指す知事たち、または候補者たちの選挙活動を支援し、アリゾナ、フロリダ、ミシガン、オハイオ、ペンシルベニア、テキサス、ウィスコンシンといった各州に、民主党所属の知事を就任させることを狙う。

そのほか民主党は、広告キャンペーンの実施や中絶に反対する共和党議員らの発言に焦点を当てたウェブサイトの開設などを通じて、共和党による中絶への規制強化に、さらに人々の注目を集めようとしている。

投票率は上がるのか


各州政府は、連邦最高裁が6月24日に新たに示した判断により、州内での中絶を禁止とするかどうか、自ら決定できるようになった。すでに多くの州が禁止、または制限しているほか、近く禁止する予定となっている州もある。

共和党は中間選挙の結果、連邦議会で議席の過半数を獲得することができれば、全米での中絶禁止の実現を目指そうとするだろう。

また、この判断によって中間選挙の重要性がさらに高まったというのは、同時に一部の州で行われる知事と司法長官、最高裁判事の選挙の結果が、中絶に関する各州の今後の政策を左右するためでもある。一部の州では、中絶権に関する住民投票も行われる。
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編集=木内涼子

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