新型コロナなどの「万能ワクチン」、動物で効果確認 将来の変異株にも対応

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さまざまなコロナウイルスに効く「万能ワクチン」を開発している米カリフォルニア工科大学などの研究グループは5日、マウスなどの動物を使った実験で、新型コロナウイルスの変異株を含む各種コロナウイルスに対して発症予防効果が確認されたと発表した。効果は今後新たに出現する新型コロナウイルスの変異株についても期待できそうだとしている。

カリフォルニア工科大や英オックスフォード大学の研究者らは、新型コロナウイルスのほか、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)といった病気の原因となるウイルスなど、動物由来のさまざまなベータコロナウイルスに有効なワクチンの開発を進めている。

サイエンス誌に発表した研究成果によると、開発中の「モザイク8」と呼ぶワクチンを接種したマウスは、新型コロナウイルスに感染させてもほかのSARSウイルスに感染させても生き残った。一方、ワクチンを接種していないマウスは新型コロナウイルスやほかのSARSウイルスに感染させると死に、新型コロナウイルスに対するワクチンを接種したマウスは、新型コロナウイルスに感染させても生き残ったが、ほかのSARSウイルスに感染させると死んだという。

モザイク8ワクチンは、新型コロナウイルスを含む8種類のコロナウイルスの計60片を用いて作製したもので、実験では遺伝子改変マウスやサルで抗体を広範に誘導することが観察された。

これらの結果から、モザイク8はヒトでも、新型コロナウイルスの既知の変異株や、将来出現する変異株、その他、動物からスピルオーバー(種間伝播)するウイルスによる発症を防げる可能性があると研究グループはみている。

カリフォルニア工科大のパメラ・ビョークマン教授(生物学)は「動物に存在する膨大な数のウイルスのうち、どれがヒトに感染するように進化し、新たなエピデミック(地域的な流行)やパンデミック(世界的な大流行)を引き起こすかは予想できない」と論文のなかで言及している。

グループは、ワクチン開発を支援する国際枠組み「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」の資金3000万ドル(約41億円)を活用して、第1相臨床試験(治験)を向こう1年内に始める見通しだ。

編集=江戸伸禎

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