米英の情報機関トップが初の共同演説「中国リスクは最大の脅威」と警告

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米連邦捜査局(FBI)と英保安局(MI5)のトップは、中国が大規模なサイバースパイ活動を行っており、他の主要国の合計を上回るハッキングを実行していると警告した。

MI5のケン・マッカラム長官とFBIのクリストファー・レイ長官は史上初の共同演説で、中国が経済と国家安全保障に対する長期的な最大の脅威であると警戒を促した。

マッカラム長官は「もしあなたが最先端の技術、人工知能(AI)、高度な研究や製品開発に携わっているなら、あなたのノウハウは中国共産党にとって重要な関心事である可能性がある」と述べた。

「また、すでに中国市場に進出している、あるいは進出しようとしている企業は、思う以上に注目されるだろう。進出は人類史上最大の富の移動と表現されている」とも指摘した。

同長官によると、中国活動に関するMI5の現在の調査は2018年の7倍になっている。一方、FBIは1日に2件の中国に対する新しい防諜調査を開始しているという。

演説は、ロンドンのテムズハウスにあるMI5本部で企業トップや大学幹部を対象に行われた。

レイ長官は、中国政府が複数の手段を一度に利用する方法を強調した。

「中国政府はメイド・イン・チャイナ2025計画で強調しているような、市場を支配するために必要な主要な技術を特定する。そして、その技術を盗むためにあらゆる手段を講じてさまざまな産業で雇用破壊という深刻な被害をもたらしている。例えば、中国はGE(ゼネラル・エレクトリック)の合弁会社パートナーの内部関係者をリクルートし、中国にいるハッカーがアクセスできるようにして最先端のジェットエンジン技術を盗もうとした」とレイ長官は説明した。

「また、人間によるスパイとハッキングを組み合わせて、ある大学から新型コロナウイルス感染症の研究を盗み出そうとする試みもあった」と指摘した。

マッカラム長官とレイ長官は、仕事の依頼や技術取引について、知らず知らずのうちに中国の諜報員と取引している可能性がある、と経営者らに注意喚起した。マッカラム長官によると、ある英国の航空専門家がオンラインで勧誘され、中国に2度渡航し、そこで飲食接待された例がある。その航空専門家は軍用機の技術についての詳細な情報を要求された。

一方、レイ長官は中国の「潤沢な資金を使ったハッキングプログラム」は、例えば中国のハッカーがマイクロソフトのソフトウェア「Exchange Server」を標的にして、米国のネットワークに1万以上のWebシェル(バックドア)をインストールしたと述べた。

そして2人は企業に利用可能な支援を活用するように促した。

「既存のチャンネルがあればそれを利用し、リンクトインや英国家インフラ保護センター(CPNI)のウェブサイトを通じて私たちのアドバイザーにコンタクトを取ってほしい。このチームは、あなたが直面しているリスクについて専門的な知見を提供し、あなたの組織を強固なものにするのを手伝う」とマッカラム長官は語った。

「もし、何かすでに起こったことで心配しているならば、報告してほしい。情報はすべて慎重に取り扱う。もちろん、屋根の修理は雨が降っているときではなく晴れたときにするように、問題が起こる前に取り組む方がずっといい」

英国と米国は中国への姿勢で接近している。英国は2021年、2027年末までに5Gネットワークからファーウェイ供給の全機器を撤去すると約束した。

在ワシントン中国大使館のリウ・ペンギュ報道官は声明で、米国の政治家が「誤った非難で中国のイメージを悪化させ、中国を脅威として描いてきた」と主張している。

翻訳=溝口慈子

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