一方、人によっては、話すよりも書くほうが得意ということもあるだろう。
「書籍を執筆する、価値あるブログ記事をシリーズ化して投稿する、自分のニッチ分野を深く掘り下げた電子書籍を3カ月ごとに作成する。あるいは、1年に一度、定例のリサーチを行って、その内容を先述の電子書籍に反映させるのも良いだろう」とウォスナーは指摘する。
ウォスナーによれば、コンテンツ戦略に関して、戦略コンサルタントやビジネスコーチ、マーケティング代理店が的外れの行動に出がちなのが、まさにこの、礎となるコンテンツの制作に関する部分だという。
「継続的にコンテンツを作り出さなければならないという考えに取りつかれてしまい、きちんとした内容のあるものを制作するのではなく、細切れのコンテンツを大量に作るという、誤った判断をしてしまいがちだ」とウォスナーは指摘する。「どういうわけか、ブログ記事を50本作成することのほうが、1年に1つのリサーチプロジェクトを完成させる、あるいは数年ごとに1冊本を書くことよりも、心理的負担が軽いようだ」
ソートリーダー的なリサーチを重ねることで、安定してクライアントを獲得できるルートを構築できる、というのがウォスナーの見解だ。この戦略は、筆者がハーバード・ビジネス・スクールの元教授であるデービッド・マイスター(David Maister)の書籍から学び、「独自のクライアント・リサーチ(proprietary client research)」と呼んでいる手法と同じだ。
マイスターは、「今どきのクライアントは、大量に投下される記事、スピーチ、セミナーに翻弄されているが、その内容は一般論ばかりであり、著者やプレゼンターは、有能なライバルとの差別化ができていないケースが多い」と指摘している。
古典となった名著『プロフェッショナル・サービス・ファーム』(邦訳:東洋経済新報社)で、マイスターは、「ライバルにないものを提供できる」ことを証明するための方法を解説している。
独自リサーチを実行することにより、見込み客にアピールできる、他では目にすることのない特別な情報を手に入れることができる。具体的には、これは同業他社との違いに関する情報であるケースが多い。権威を持った営業の基礎とは、礎となるコンテンツを、話術や文章力によって提供することにある。つまり、ターゲットとするニッチなクライアント層に対して、自分には彼らにとって役に立つ専門知識があることを示すのだ。
「礎となるコンテンツを作ることは、権威あるソートリーダーになるという、自分が目指す地位を確立するためのカギになる」と、ウォスナーは述べている。