ビジネス

2022.07.11 06:00

米国で続く航空会社やレストランの人手不足は労働者のせいではない


レストランや航空会社の従業員は、特に大きな影響を受けた。飛行機は便数が削減され、空っぽを絵に描いたような状態だった。人々が集う場所だったレストランは、テイクアウトの店になった。各業界の労働者は解雇や一時帰休に追い込まれた。立ち止まって考えてみてほしい。

特に、このひと晩で自由を奪われたことが両業界の従業員だった人的資本の思考回路に与えた影響について考えてみてほしい。繰り返しになるが、我々が話しているのは、自分の才能をどのように発揮するかという現実的な選択をしている人たちのことだ。その選択が突然あまり良いものでなくなったことは、雇用の急速な消失が証明している。

当然ながら、右派と左派どちらもその点を見落とした。左派の警戒論者は、人間は自分で賢い決断ができないほど愚かだという信念から、ロックダウン(都市封鎖)を支持した。右派もそれほど良い行動をとらなかった。自由を返上することについて、右派は過剰な失業給付が今日まで続く人手不足の原因だと不愉快に非難した。

罪な政治家が労働者に与えたさまざまな失業手当という侮辱的な不条理さを擁護することなく、それらに焦点を当てたのは的外れだった。右派の人たちが以前から理解していた「体制の不確実性」と呼ばれるものを無視したのだ。これは右翼のヒーローであるロバート・ヒッグスが賢明にも作った造語だ。

政治家が個人の意思決定(経済的、個人的なもの)に積極的に干渉するなら、その干渉はとりわけあらゆる経済を構成する人々の行動を停止させることになる。なぜ、究極の個人投資(就職)をするのか、もしその仕事が実現可能かどうか疑わしいとしたら?

読者の中で、米司法省から反トラスト法違反の捜査を受ける可能性がある企業に積極的に投資する人はいるだろうか。少なくとも、より困難な未来が待ち受けている可能性を考えると、尻込みしてしまうのではないだろうか。

労働者は異なるだろうか? 時間は多くの意味で最も貴重な経済商品だ。そのため、政府の介入によって生まれた刹那的な性質を持つ仕事に労働者が戻るのを嫌がるのは驚きだろうか。そうであってはならない。

そうあるべきでないのに、評論家たちは失言し続けている、保守的な社説は、ユナイテッド航空が14.5%の昇給を実施したおかげで「賃金・価格スパイラル」が起こり、その結果「インフレ」になると警告している。いや、これはインフレではない。もっと現実的にいえば、労働者が一夜にして奪われるかもしれない仕事に対してより多くの賃金を要求しているというシグナルだ。

実際、インフレでもなんでもない。物価が上がっているのは、自由をひどく奪われた結果であり、とりわけ労働者はこれまで自分の才能をどこに使っていたのかと疑問を抱くようになったのだ。正当な理由がある。

翻訳=溝口慈子

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