しかし、こうした恩恵が実現するためには、まず医療保険プランが新ルールに準拠しなければならない。
以前施行された病院料金透明化規則の結果は、この点の難しさを物語っているかもしれない。この透明化規則は、病院があらゆるサービスと項目の標準料金を公表し、最もよく利用されるサービス300項目の価格を消費者にわかりやすい形で公開することを義務づけている。同規則は2021年1月1日に施行されたが、1年が過ぎても、遵守している病院はわずか14%だった。
今回、CMSは前よりも高額の罰金を課し、必要なデータを提供しない保険業者は、1日当たり、影響を受けた顧客1人につき100ドル(約1万3500円)支払わなくてはならない。大型のプランならたちまち巨額に達する。
多くの保険業者は必要なファイルをすでに公開しているが、それを見つけるのは容易ではない。少なくとも1件、ページはあったがファイルが1つもなかったケースがあった。
しかし、規則に完全準拠したからといって、自動的に消費者が必要な情報を得られるわけではない。このデータ(機械読み込み可能なファイル)で要求されているフォーマットは、一般消費者にとっては事実上解釈不能だ。これらのファイルは、消費者に優しいデータ表現を作るのには役立つかもしれないが、それ自身はまったく消費者に優しくない。
医療データ会社リボン・ヘルスの共同創業者、CEOのネイト・マスラックは、提供されたデータは患者が理解するには複雑すぎるだけでなく、データには無関係な数字や古くなった数字が満載されているという。
「価格透明性規則だけでは、患者に低料金の治療を見つけさせることはできません。消費者にわかりやすいかたちで患者に実態が提供される必要があります」とマスラックは述べた。
一方で、新しい規則はIT企業などが、消費者向け価格透明性を実現する環境を作り出した。
マスラックの会社は、ターコイズ・ヘルスと共同で、医療組織がデータを消費者にとって利用しやすく理解できるかたちにしようとしている。両社は、価格データを医者の所在地、専門分野、専門知識、質などのデータと組み合わせようとしている。
「そうすることで、患者が治療先を探す際、大きな買い物をするのと同じように見て回れるようになります」とマスラックはいう。「私は、患者が治療の予約をホテルの予約と同じようにできる未来を楽しみにしています。そこへ行くためのわかりやすく正確な情報、料金はいくらかかるか、どんな結果が期待できるかとともに。私たちは、誰もが良心価格で質の高い医療を簡単に見つけられる世界を作ろうとしています。新しい規則はこのビジョンのために不可欠です」