ビジネス

2022.07.06 11:15

「株主顔合わせを自然の中で」 19億円調達のSANUが挑む独自のカルチャー作り

CEOの福島弦(左)とファウンダー兼ブランドディレクターの本間貴裕(撮影=林孝典)


本間の経験から挑むのが、ティール組織(ルールなどの縛りをなくし、社員の意思によって目的の実現を目指す組織形態)を発展させた、自律分散型のチームである。
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本間は、多くの人気ホステル・ホテルを手掛けるBackpackers’ Japan(バックパッカーズ・ジャパン)を経営者として指揮し、労働集約型のサービス業では珍しいティール組織を2年がかりで導入し定着させた。

「トップダウンで階層を作っていくと、組織が100名を超えたあたりで、皆が肩書きに縛られた仕事をするようになり、つまらなくなっていると危機感を覚えました。そこで、全スタッフに裁量権を与え、組織改革をしたんです」

ホステル内のカフェで使うコーヒー豆の選定から内装まで、現場スタッフが自主性を持つ。この改革は実を結び、メンバーが生き生きと働く環境を築いた。ただ反面、スピード感は失われたとも感じたという。
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「SANUも自主性の高い組織でありたいが、事業を一気に広めるためにはスピードも欠かせません。前職で実現できたボトムアップに加えて、トップダウンのスピード感を共存させた、自律分散型の組織を作りたい」

では、そこで鍵となるのは何か?

「考え、意思決定し、実行する。事業はこの3つの要素で動いていきます。意思決定は、経営者がやることが多いですが、考えることは役割や役職に関わらず全員がやるべきこと。全メンバーが“考えるリーダーシップ”を常に持っていて欲しい」と福島は話す。

本間は次のように考える。

「組織は、時代や人の価値観に合わせて醸成されていくものだと思っています。Live with natureは、SANUにとって理念ではなく“問い”。より心地よい自然とのあり方を考え続け、SANUなりの形で、社会に提案し続けたい。日々この問いと向き合っています」

本間貴裕

お互いのユニークな経歴を活かし、SANU流のチーム作りに挑むSANUだが、二人は組織内でどのように役割分担をしているのだろうか。

「福島が、“広げる”役割。そして僕が“深める”役割。事業拡大のために福島がアクセルを踏む一方で、コンセプトや理念がブレていないか立ち止まって考え、思考を深める時間も必要。そこを僕が担っています」(本間)

互いに哲学を持ちながらも、「こうあるべき論」は主張しないことも印象的だ。

「違って当たり前で、変わってもいく。SANUを使うことが幸せだとか、カーボンポジティブ(二酸化炭素の排出量が吸収量を下回っている状態)だからSANUを使いましょう、なんて押し付けるつもりもありません」と福島。

「正義を掲げることは、悪を定義づけることでもあります。選択肢のひとつとして、SANUがある暮らしはもっと楽しいかもしれないよと、発信していけば共感者が増えるはずです」(本間)

今回調達した資金は人材採用と事業拡大に充てる。現在いる18名のメンバーを2倍に増強し、2028年までに、全国拡大を目指す。

「スキルも大事ですが、何より想いに共感してくれる人と働きたい。一緒にメシを食いたいと思える仲間を増やしていきたいですね」(福島)


井澤梓(いざわあずさ)◎立命館大学卒業後、金融機関を経て、2010年ビズリーチの新規事業立ち上げに参画。法人営業や人材エージェントの新規開拓営業に携わる。その後ライターとして独立し、経営者などのインタビューを数多く手掛けている。2020年にカタルを設立し、代表取締役に就任。

文=井澤梓 編集=露原直人

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